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久住@ついった厨
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ジターバグ “薔薇の花嫁”

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 車を停めて外へ出ると、飛び回るサーチライトが荘厳な博物館を照らし出していた。
 にしても、右を見ても左を見ても警察官警察官。こんなに人員を割いては捕まるものも捕まらないのではないか。これだけの広さなのだから宝石のある部屋に警備を絞ったほうが遥かにマシだ。これだから頭の固い上の連中の言うことを聞くのは嫌なのだ。
 アーサーは何度目かの深い溜息を吐いた。そこにひょこりとアルフレッドが顔を出す。

「気が滅入るから溜め息とか止めてくれよ。今更自分の眉毛に絶望したのかい?」
「…ヤキ入れるぞてめぇ」

 唸るように吐き捨てると、アルフレッドは怖いなぁと肩を竦めて見せる。反省の色は全くもってない。
 アーサーは苛付きを抑えようと煙草を取り出したが、口に咥える前に伸びてきた手に奪い取れれてしまう。

「博物館は禁煙なんだぞ」

 ほら、とアルフレッドが小さなプレート指す。そこには確かに禁煙のマークが表示されていた。気を紛らわせる為にアーサーは口を開く。彼は車を降りて早々、アルフレッドに警備体勢を確認しにいかせていたのだ。

「で、どうだったんだ?」
「外が50、中が20、内セキュリティ室に4人と宝石のある部屋に6人」

 アルフレッドがぺらぺらとメモを読み上げるが、透けて見える文字は本人のものではなかった。メモを取るのを面倒臭がって聞いた人間に書かせたのだろう。アーサーはもうこの際細かいところは(細かいとはこれっぽっちも思っていないが)目を瞑ることにした。

「外に人を置き過ぎだろう…。俺たちは宝石の展示室に行くぞ。直接叩く」

 展示室に向けて足を踏み出しながら、アーサーは懐にそっと手を遣る。脇の下には固い感触──使い込んだグロックがホルスターの中に納まっている。
 博物館や美術館での無闇な発砲は禁止されているが、そんなのは知ったことではない。撃たなければ宝石はまんまと奪われてしまうだろう。あの怪盗は撃つ気のない者が銃を向けて脅しただけでは怯みもしないのだ。いざとなったら脚でも狙って逃げられないようにしてやろうと、アーサーは不穏な思考を脳内で展開させる。

「君顔怖いよ」

 目が据わり始めたアーサーを半眼で見つめアルフレッドが呆れたように声にした。
 聞こえていない振りをしているのか聞こえていないのか、アーサーはセキュリティ室を素通りして展示室へ向かう歩を早めた。どうせセキュリティ室は怪盗には開けられない。アーサーはそう確信していた。