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【中身見本】Halloween

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「―――ふーん……」
ハリーはその時計から、視線を僕に向けて、意味深な顔で笑った。
「この価値のある高価な時計を受け止めたのは、僕なんだよねー。そして倒れそうな君を助けたのも、僕なんだよねー」
また相手の笑みが深くなる。

「それで、ものは相談なんだけどさー……。このお礼は、何で返してくれるの、ドラコ?」
「何って……、えっ?もしかしてお前、お金でも欲しいのか?!」
ハリーは大げさに首を振った。
「はぁー、やだやだ……。金持ちはすぐこれだよ。何でもお金で解決しようとしてさ。札束見せたら、みんな頭を下げると思っているんだから、どうしようもないなー」
やれやれと肩をすくめる。

「一言いっておくけどさ、僕はキミが思っているよりずっとお金持ちだよ。ポッター家の財産は全部僕ひとりが受け継いでいるからね。一生働かなくてもいいくらいの財産はあるよ。僕はお金なんか、ちっとも興味がない!」
きっぱりと言い放って、顔を近づけてきた。

「ねぇドラコ。君は僕に何をしてくれるの?」
「何って……。僕は―――」
鋭い相手の瞳が受け止められず、ぎこちなく視線を外す。
「ほかに何かないの、ドラコ?」
畳み掛けるように問われ焦ったように頭の中で思考するが、何も思い浮かばなかった。

(生まれのよさも、純血な血筋も、称号も、財産も、それがいったい何になるっていうんだ)
(ああ、本当に僕には何もない―――)
くやしくて、唇をかみ締める。
(プライドや自意識で囲まれた自分の中身は空っぽだ)

「すまない、ポッター……。僕は何も返せそうにない」
呟くようにそう謝ると何も持たない自分が惨めで、涙が出そうになった。
「―――えっ、本当に何もないの?」
ハリーは不思議そうな顔で尋ねてくる。
僕は答えられず、ぎゅっと両手を握りうつむくしかなかった。

(何もない、何者にもなれない、自分が情けなくてしょうがない)
そして思った。
(―――ああやっぱり、現実のハリー・ポッターは嫌いだ………。意地が悪くて傲慢で横暴だ。容赦がなくて、僕にはとことん冷たい)
ため息をつくと、ゆっくりと目を閉じた。

(ハリー…、ハリー、ハリー……)
辛いことがあるといつも僕はその名前を呼んだ。

(手紙の中のハリーが本物だったらどんなにいいだろう……。いつも陽気で落ち着きがなくて、下手くそな文字で「ありがとう」と何度も言ってくれる彼が、本当のハリーだったら………。)
もう現実なんか見たくもない。
僕はいつも叶わない夢ばかりみてしまう。
(突き放した冷めた瞳の彼が本物のハリーなのは分かっている。
ああ、そのくらい十分に分かっているさ)

「いい加減にしろ。腕を開いて僕を離せ!」
何かを断ち切るように思い切って瞳を見開き、相手をにらみつけた。
「別に離してもいいんだけど、何か交換条件がないとね」
僕の威嚇する態度をものともせず、ハリーは覗き込むようにこちらをじっと見つめ返した。
「条件がないと解放しないのか、お前は?最低だな!」
「だって僕たちは別に友達でも何でもないんだしね」
肩をすくめてあっさりと告げられた言葉に、一瞬で胸が痛くなる。
頭では分かっていたけれど、そう相手からはっきりと言われると、こんなに傷つくとは思ってもいなかった。

(ああ本当に僕はとことんハリーに嫌われているんだ……)
そう思った瞬間押さえきれないほどの悲しみが沸きあがり、今まで押さえつけていた感情が一気に溢れてくる。
たまらず涙がボロボロとこぼれ落ちた。
「うぅ……。お前なんか大嫌いだ。……だいきらい――だ……。あっちへ行けよ。僕を離せ……」
首を振って嗚咽をかみ殺す。
こんな泣いている姿なんか見せたくはないのに、止めようとしても涙があとからあとから溢れて、どうしようもなかった。

どんなに思っても報われない思いにからだが震える。
泣いている顔を両手で覆った。ヒックとしゃくれたような鳴き声をあげて泣き続ける。
とても自分自身が惨めだった。

「―――えっ?ドラコ、泣いているの?」
戸惑った声がする。
「いじわる……」
「―――なに?」
くぐもった声が聞き取れなかったのか、相手が顔を寄せてくる。
柔らかい髪の毛がほほに触れた。

「お前みたいな、意地の悪いやつなんかいない……」
「でも、君が今まで僕に仕掛けてきた悪戯や悪口に比べたら、軽いものだと思うけど……」
「いや!お前のほうが、ずっとずっと、ひどい!」
たまらず顔を覆っていた手をどけて前を見ると、息がかかるほど自分の視界いっぱいに寄せられたハリーの顔があった。

エメラルドの瞳に、癖のある黒髪。
日によく焼けた肌。背中に回された力強い腕。
制服越しに伝わってくる暖かさ。そして、額にあるそのイナズマ。
その瞬間、理解した。

(ああ…、僕はハリーが好きなんだ)と。

(どうしようもなく、彼が好きでたまらないんだ。だから振り向いてもらいたくて、必死で意地悪して喧嘩をふっかけて挑発したんだ)
(好きだから手紙を出して、思いがけず届いた返事が嬉しくてしょうがなかった。やっと気付いてくれたようで、本当に嬉しかったんだ。―――ああ僕は、ハリーから届く返事をどれだけ喜んだだろう……。今日だって昼食もほとんど取らずに、植物の手入れをしようとしていたのに―――。それなのに……)

「うう……」
また涙とともに嗚咽が漏れる。
止めようとしてもそれは後から後から溢れてきて、自分でもどうしようもなかった。

相手がそんな泣きじゃくっている僕を見てとても困った顔をしているけど、知ったことじゃない。
「お前が悪いんだ。……お前のせいだぞ」
「―――ええっ?僕のせいなの?」
相手は腑に落ちない顔のまま驚きの声を上げた。
「今だって君を助けたし、時計も拾ったし、それなのにどうして?」
ぶつぶつと言い訳がましいことを口にする。

「お前が意地の悪いことを言うからだ。いつも、いつも、僕を無視して、にらみつけるから……。―――だから、お前のせいだ」
泣きじゃくったまま相手の胸をたたいた。

「バカ野郎…、ううー………」
「――バッ……、バカって、いきなりそんな……」
「――キミなんか性格は悪いし、スポーツ以外とり得なんかないし、――メガネだし、勉強も出来ないし、まるっきりのバカだ……」
涙声で嗚咽に詰まったまま出てくる言葉は、自分でも支離滅裂なのは十分に分かっていた。
……だけど、どうしようもないじゃないか。
自分が初めて好きになった相手の前で、理性的になれって言われたって、なれるものじゃない。
感情のほうが先走ってしまう。

「今の君の言葉のほうが、かなりきついと思うけどな……」
ハリーは僕の毒舌に顔をしかめるけれど、別に怒ってはいないようだった。
「いじわる……」
そう言いながら相手をにらむ。

涙がボロボロとこぼしながら泣きじゃくる僕を見て、ハリーは軽く息をついた。
囲っていた腕をほどいて、今度は柔らかく抱きしめ直してくれる。
懐深く抱き寄せて、「もう泣かないで」と耳元にささやいた。

「お前のせいだ……」
「うん、ごめんね」
「ハリーが悪いんだ」
「ああ、ごめん」
「いじわる」
「ごめん……」
作品名:【中身見本】Halloween 作家名:sabure