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toccata

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「オー、ワリカン。なるほど、おぼえました」

全員が小さく溜息をつく。
セシルの天然ボケで悪い雰囲気が和らいだ。

「分かったよ…」

レンはポケットの中からカード入れを出す。
その中にあるカードを見て音也が目を輝かせた。

「すげー!ぷらちな!プラチナカードだ!!レン、本当に金持ちなんだなー!」
「普通だろ、これくらい」
「…お前、今サラリと嫌味な事を言っているって分かってるか?」

翔の突っ込みに対してもレンは肩をすくめて笑うだけだった。
それを面白くないと思ったのか、また真斗が口を出す。

「カードでどうする。それでは自分の分だけ払うのは無理だろう」
「別々の会計にすればいいんじゃないの?」
「…確かにそうだが…」

至極まっとうな音也の突っ込みに、真斗はひるんだ。
更に、那月が追い打ちをかける。

「この時間だと混んでますからね…会計別々は嫌がられるんじゃ…」
「…そ、そうなのか…」
「はい、レジの所にそう書いてありましたよ」
「…ふ、不覚…」

がくりと肩を落とす真斗を横目に、トキヤは帰る準備をし出した。

「我々にも時間が限られていますしね、深く考えるのは止めましょう。
 七海さんの分は私が支払いますので」

立ちあがった瞬間、翔がトキヤの言葉にかみついた。

「おい、何恰好つけてんだよ!抜け駆けすんじゃねー!
 お、俺が七海の隣にいたんだ、俺が支払うのが筋だろ?」

その言葉で、他のアイドル見習いたちが色めき立った。
トキヤの言葉を意味を認識したのだ。

「翔ちゃん!ずるいです、それこそ抜け駆けですよー!」
「違う!断じて違う!俺は、当たり前の事を言っただけだ!」
「えー!?それだったら、隣にいた俺にも支払う権利があるよね?」
「うぅ…そ、そうだけど。こう言う場合は右側の奴が偉いんだ!」
「嘘だー!翔、嘘ついてる!」
「なんだよーもー!音也、納得しろよー!」
「ナットクなんてできません!princessの分は、ワタシが払いマス。
 王子の役目デス」
「こう言う時だけ王子って単語を持ってくるのはどうかと思いますが…」
「Mr.イチノセ、あなたはワルイ人、一人ジメ良くないデス」
「…こう言うのは、言い出しっぺに優先権があるんじゃないんですか?」
「うむ、セシルの言う事に一理ある。一ノ瀬、お前は抜け駆けをしようとした。
 今回は、お前にには権利はない」
「それこそ納得がいきません…っ」

わーわー、と騒いでいる六人を見て、レンは溜め息をついて解決策を口にした。

「だから、俺が支払うって。俺、小銭なんてみみっちぃもの持ってないから」

それを聴いた六人は一斉にレンを座った目で見つめ、同時に言う。

「お前は誰かから借りて支払え!」

結局、言い合いは止まらず、時間の無駄だと気が付くまでに三十分を要した。

「後腐れなく、ここは運で決着をつけましょう」

トキヤの意見に皆が賛成する。
春歌の頼んだ分の支払いに関しては、アミダで決める事になった。
アミダは店員に無理を言って書いて貰い、七人がそれぞれ好きな所に線を一本ずつ足す形で創られた。

何の因果か、結局カードしか持ち合わせていなかったレンが支払う事に。
勿論、皆の分を”カード一括”で。

作品名:toccata 作家名:くぼくろ