toccata
そう考えていても、「だが」と言う接続詞が出てきてしまうのだ。
(レディ、早く逢って君と俺との愛の世界を愛の言葉を君の音楽と俺の歌声で紡ぎたいよ…)
窓を見て、雨の音を確認する。
スタジオでの収録が多いから天候は関係ないだろう。
俺が”本気”を出せば、外面からしか見えていないお飾りの部分だけにしか興味のない人間には随分とごまかしがきかせられる。
そこに「本当の俺はいない」。
だが、求められるのならば、レディが作りだす世界にいたいならばそれをよしとせざるを得ない。
(早く俺の週にならないかな…)
はやる気持ちを堪え、俺は再び“偽物の俺”を求める台本に目を通し出した。