酔い覚まし
「あー菊ちゃん来てくれた!!ありがとうっ、本当に心から感謝っ!!」
「フランシスさん・・・どういう状況なんですか?」
「んーとね、それが・・・」
闇に隠れるようにしてひっそりと佇む石造りの建物
その入り口らしき所に柔らかな曲線を描く金髪と薄青の瞳を持つ美しい青年が立っていた
「アーサーがさぁ・・・」
「成程、了解です」
「これだけで分かったの!?」
「あの人のことは心得ておりますので」
またしても酔って手が付けられない状態なのだろう
「じゃあ後はよろしく★お兄さんはもう限界です」
「え、それはどういう」
事ですか、と問おうとした声は青年が去っていく足音にかき消された
「行ってしまわれた・・・」
フウとため息をつきながら酒屋へと入っていく
仕方がない、あの人の傍にいると決めたときからこうなることは分かっていたのだ
コツコツと小気味のいい足音を立てて冷たい石の階段を降りる
カランと小さな音を立てて開いたドアの向こうに困り顔のマスターと彼がいるのが見えた
「あ、あんたこの人の連れかい?」
マスターがこちらをみて顔を輝かせる
「迷惑をおかけし大変申し訳ございません。すぐ、連れて帰りますので」
ペコペコ頭を下げて完全に酔っている彼の元へ寄る
「んー?何で菊がここに居るんだぁ」
泥酔した者特有の恍惚とした表情を浮かべてこちらを見ている
「アーサーさん、帰りますよ」
「菊の家に行きたい」
「貴方の家に今から行けるわけがないでしょう。もちろん私の家ですよ」
「それなら行く」
意外と素直についてくる
「本当に、ご迷惑をおかけしました」
「あんたも大変だねぇ」
逆にねぎらいの言葉をかけられるとは・・・
小さなベルの音がして扉がしまった