風丸受けまとめ
*豪風
昔から、怖い話が極端に嫌いだった。
お化け屋敷で泣いた事もあるし、修学旅行中怖い話で盛り上がった時はなかなか眠れなかった。
そして今、まさに俺は眠れないでいた。
連想ゲームのように広がっていく話題にふと心霊に関する話が飛び出た。それを皮切りに、部員達が実体験や人づてに聞いた話等を披露する怖い話大会になってしまった。
黙って聞いていたが、内心ではここから逃げ出したい気持ちでいっぱいだった。
やっと雑談が終わり解散する頃には、消灯時間の10分前だった。
誰かの部屋に入れてもらおうにも廊下は真っ暗で、とても出ていく気にはなれなかった。
仕方なくベッドランプを付けて布団を被っているが、物音がするたびにびくびくしてしまう。
早く朝が来れば良いのに。そう思いながら布団に潜った時だった。
コンコン、と扉をノックする音が聞こえた。
心臓が止まるかと思った。
咄嗟に見を守るように布団を身体に巻き付けて、様子を伺う。
「風丸、俺だ。起きてるか?」
「…豪炎寺?」
おそるおそる返事をすると、カラリと扉が開いた。
「やっぱり起きてたか。」
そこに居たのはお化けでもなんでもなく、紛れも無く豪炎寺で、俺は思わず飛び出して抱き着いた。
「豪炎寺、頼む、一緒に寝てくれ!」
「ああ、そのつもりだ。」
見ると豪炎寺は片手に枕を抱いていた。俺は安心して危うく泣きそうになった。
「ありがとう豪炎寺…!」
心からそう述べると、豪炎寺が急に顔をそらしてぶっとふきだした。
「なっ、なんで笑うんだよ!」
「…悪い。怖いなら話聞かなきゃいいのにと思って。」
「皆あの場にいたし…そういうわけにもいかないだろ。」
すこし睨みつけて言うと、そうだな、と豪炎寺が今度は微笑んだ。
豪炎寺が来てもやっぱり怖いものは怖いので、しがみつくようにして豪炎寺にくっつく。
お化けが怖いなんて情けなくて馬鹿馬鹿しいと自分でも分かっている。しかし豪炎寺は何も言わず抱き返してくれた。
その優しさに感謝しつつ目を閉じると、トクトクと規則正しい心臓の音が聞こえた。
妙な安心感を誘う音。
恐怖心はだんだん薄れていき、トロトロと眠気がやってくる。
後に残ったのは暖かな温もりだった。