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金色の双璧 【単発モノ その1】

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2.

「ほら、いた!こっちだアイオリア。見てみろよ〜」
「うわ、すげー、かっこいい」
 木の幹にしがみついていた固い羽に覆われ、長い角を持った虫をキラキラと目を輝かせながら眺めた。「あっちにも行ってみようぜ」「うん」と次から次へと場所を移動させながら、森を抜け、そしてゴルゴーンの丘に辿り着いた。
 ふわふわと揺れる、色とりどりの花の上で思いっきり寝そべって、ごろごろと笑いながら転がった。
「きゅうっけーーい!」
「何、それ!兄ちゃんの真似?」
 アイオロスがする訓練中の休憩の合図を真似するミロにげらげらと声を上げてアイオリアは笑った。つられたようにミロも楽しげに足をバタつかせながら、腹を抱えて笑っていた。
「あー、笑い過ぎて死ぬ!」
「面白いな〜おまえ、最高」
「だろ?あれ……?なぁ、リア、見て」
「ん、なに?」
 ぽんぽんと叩かれて起き上がる。ミロが指差す方向に視線を定めた。同じ年頃の子が二人、少し離れたところで一番花が咲いている場所に座り込んでいるのが見えた。
「なぁ、行ってみよっか?」
 興味がそそられたらしいミロの言葉に「ウン」と返す。起き上がって、駆け寄っていった。ある程度距離が縮まったところで、ふたりは顔を見合わせて立ち止まる。
 見慣れない服を着たふたり。一人はこっちを向いていたから、顔がはっきりとわかった。不思議な眉毛だなーと思ったけれども、愛らしい顔立ちをした少女。もう一人は後ろを向いていたから、顔はわからなかったけど、小さくて、肩より少し長いくらいの真っ直ぐで綺麗な金色の髪をした子だった。
 着ている服装から、たぶんこの子も女の子なのだろうとアイオリアは思った。ちょっとだけ、ドキドキした。ミロも同じだったのか、ちょっと緊張した顔をしていたのが可笑しかった。
 どう声をかけようかとモジモジしていると、不思議な眉毛をした女の子が先に声をかけてきた。
「何か御用ですか?」
 まるで大人みたいな口の聞き方。何だか、ちょっと偉そうだと思って口をヘの字に曲げて「別に」と返したが、やっぱり気にはなる。聖域では見かけた覚えがないし、かといって時々遊びに行く事もあるロドリオ村でもこんな子供は見た事なかった。
「おまえら、どこの子だよ?」
 ミロがちょっとカッコつけながら、まるでアイオリアを代弁するように訊ねた。よく、聞いてくれた、ミロ!とアイオリアは心の中で叫んでいた。
「……どこの子?人に訊ねる前にまずは自分たちから名乗るべきではないですか」
 なんか嫌な話し方をするヤツだと思う。ちょっと可愛いと思ったけど、こういう生意気な「女」は嫌いだった。
「ほっとこうぜ、ミロ、こんな生意気な女と一緒にいたら女臭くなるぜ!」
 アイオリアもちょっとカッコつけて、ぐい、とミロの腕を引っ張って踵を返し、そのままカッコよく立ち去るはずだった。
「え!?」
 ぐるんと身体が回転したのはわかった。でも、なんでそんなことになっているのか、アイオリアにはわからなかった。
「うわっ!わわっ……!!?なんだ?どうなっ……」
 あっという間に1メートルくらい逆さ吊りになっていた。
「アイオリア!?大丈夫か!?おい、おまえ、やめろよ!!」
 花畑に座り込んでいた不思議眉毛の少女が顔を真っ赤にして睨みつけていた。
「わたしは女じゃありません!謝りなさい!」
「わたしって言ってるじゃ……うわぁぁあ!!」
 ぐるぐるとそのまま空中回転、一人メリーゴーランドと化す。ますます顔を真っ赤にして怒るそいつはどうやら、女じゃなかったらしい。しかも、こんな訳のワカラナイ力を使うなんて卑怯だ。ミロはよく状況を理解しないままだったけれども、友達のピンチだとはわかっていたようで、「わぁぁ!!」と勢いよく雄叫びを上げて、突進して行った。
 あとはよくあるパターン。取っ組み合いの喧嘩だ。そいつは可愛い顔をしておきながら、容赦なく殴る蹴ると結構、喧嘩に強いミロにも負けじと応戦していた。
怒りの矛先がミロに集中したおかげで、不思議な念力から開放されたアイオリアはベシャっと地面に激突していた。
「いてててて……?」
 目の前に影。なんだろうと顔を上げると、もう一人の子がアイオリアの前に立って見下ろしていた。目は瞑っていたけれども、もの凄く可愛い子だった。本当に可愛かったのだ。一目でアイオリアは好きになった。
「……ムウを止めて」
 眉根を寄せてちょっと俯いて。
 消え入りそうな声で可愛い子にお願いされたら――舞い上がってしまうのも当然だと思う。いっぱしのヒーロになった気分でモミクチャの二人の間に割って入って、興奮状態の二人にボッコボコにされる羽目になってもアイオリアは頑張った。うん、とっても頑張ったのだった。