二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

lotus

INDEX|4ページ/11ページ|

次のページ前のページ
 

3.萌芽




「―――シャカ」

「シャカ」

「シャカ」

 何度も、呼んでみた。けれども、当人はピクリとも反応することなく、ただ、ベッドの上で生えていた。実際、そう表現するしかないような状態なのだ。
 土から顔を出したばかりの朝顔の芽のような風情で、身じろぎひとつしないのだから。
 子供の名前は「シャカ」だということが判明したのは、つい最近のこと。それは教皇の法力によるもので、どのようにして追求されたのかはわからなかったけれども、深層心理にでも働きかけたのかもしれない。
 下手をすれば傷を残す可能性だってあったはずだが、そうでもしなければ、この子供の名前すら判らないまま。不便というよりも不憫でならなかったこともあって、慎重に探られたらしい。
 負担をなるべく軽くしようと執り行われた結果は、名前のみを知ることができただけ。この子供の素性などは、一切わからないということだった。

『どのくらいの期間、あの暗闇の世界の中に、なす術もなく放り込まれたままだったのか。恐怖、飢餓......絶望。負の気に満たされたはずの子供。その代償、影響は計り知れないもの―――』

 噎び泣くような暗い声で語る教皇の言葉を、暗澹たる想いで私は受け止めるしかなかった。そして与えられた命令は、私にとって福音のごとくであった。
 本来ならば許されないことではあった。聖闘士ではない子供の世話をすることなど。けれども、行きがかり上、この子供がある程度成長し、この土地で生きて行くことができるようにと特別の計らいにより、許されたのだ。私は何の疑いもなく、教皇に言われた言葉を鵜呑みにして、ただの子供として生きていく力をつけるためにだけに、シャカの世話をしようと思ったのだが。
 今思えば、恐らく、このとき既に教皇には判っていたのかもしれない。この子供......シャカには聖闘士としての素質があったということを。
 それも抜きん出た力を持つ、最強の黄金聖闘士になるであろうということも。


作品名:lotus 作家名:千珠