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【ヘタリア】兄さんが消えない理由 マリエンブルク城編2-3

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「そうみたいだな。まあ、ここは後でもいいだろ。城の向こうの丘に抜ける抜け道があったんだ。今は、落盤をおこしてるかもしれねえな。」

「・・・・・ひょっとして、そこから俺たちに囲まれたとき・・・・・・・食糧とかこの抜け道通って、中に入れてました?抜け穴、全部埋めたと思ってたけど・・・」

「おう!お前らに囲まれて、食うもんなくて新しく穴掘って、探しに行ったんだ!!あんときゃ、腹へって困ったぜ!!」

「まさか・・・・まさか・・・あの時うちの兵糧がなくなったのって・・・。」
「へへへ・・・・お前んちのめし、うまいよな!」

「こんのやろう!!俺のめし、なくなったの、お前のせいだったし!許せん!!」
「うわっと。待て待て!あれは、もう昔のことだ!!」

「おかしいと思ってたんだ!!貯蓄分なんてとっくになくなってるはずなのに、籠城やめないし・・・・。」
「まあ、昔のことだし!もういいじゃねえか・・よっ!」
「いいや!!許さんし!!おれの飯返せ!!」
「返せって言われても・・・もう何百年前のことだからよ。」
「いんや!何百年分の利子付けて返すし!!」


(あー、どうして兄さんが仕事に入るとこうなるんだ・・・?)

「あのね、ポー。あとで何千倍ってことで返してもらうとして、今はここの調査をしようよ。」
「ああ、そうだ!そうしよう!!ええっと、あとお前ら、何がおかしいって言ってたっけ?」
「ごまかしても忘れないし!」

「あれ、あの旗ですよ。なんか空中に置いてあるみたいでしょう?ほとんど痛んでないみたいだし・・・。」
ギルベルトは上を見上げた。
騎士団の紋章である鷲の姿と十字架。


「はっはー!あんなところにあったのか!!」
「あれ、浮いてるし!絶対変だし!!」

「あれはなあ・・・・。うん、ちょっとそのライト、天井向けてあの旗照らしてみてくれ。」

ルートヴィッヒがライトを空に浮く旗に向ける。
きらきらと小さな旗がきらめいた。

「まだわかんねえか・・・・。下からの光だと見えねえかな。」

ギルベルトは部屋の中を見渡すと、奥まった壁にかかった武器の中から槍を取り出すと上にむかって投げた。

「何をしてるんだ!兄さん!!危ないだろう!!」

「いいから・・・上を見てみろよ。」

ルートヴィッヒの視線の先には、空中で何かにつきささったように止まっている槍。

えーと、梯子かなんかあるか?あそこへ行く道もさっきの壁の向こうなんだよ。」

「あれは・・・・・!橋か!橋がかかってる!!」

ルートヴィッヒの叫びに、皆が上を向く。


「ああ!!ポー!こっち来て!こちから見て!」

「えー!なになに?」

上を見上げると・・・・・・。

壁の色に溶けて今まで全く分からなかったが、かすかに周りと色が違う、空中にかかった
「橋」のようなものがこの部屋にいくつもかかっている。

「兄さん、梯子だ。」

ルートヴィッヒが梯子を壁に立てかける。

ギルベルトは梯子を登ると、3階ほどの高さにある「橋」の上に乗る。

「隣の部屋との通路はやっぱり落盤で崩れてんな。こっちの通路はどうだ?」

下から見ると、何もないところをギルベルトは歩いているように見える。

「光の角度によっては見えるけど、上のほうはあんまり照らせないから、よくは見えないですね。」

「んなら、お前らも上に登ってこいよ。」

ギルベルトは通路の真ん中あたりまですたすたと歩いていく。

立てかけられている騎士団の団旗をどけると、団旗はぼろぼろと崩れ落ちた。

「うわっ。やっぱり布とか鉄はもたなかったんだね。ぼろぼろだ。」

「見ろよ。これなら少しは見えんだろ。」

橋を見ると、崩れた団旗の残骸がかかって、さっきよりも「橋」らしいものが空中にはっきり見える。

「これも錯覚といやあ、錯覚だよな。下から見ても、なにがあるかわからないようにして作ったのかな・・・・。」

「これはせまいな。落ちたら大変だ。」

梯子を上っていったルートヴィッヒが橋の上に乗る。


ギルベルトは小さな旗を持ち上げてじっと見つめる。

「これな、下に持っていくからよ。そしたら、よくわかるだろ。」

旗を持ち上げると片手に持つ。

ギルベルトは橋の反対側の壁につく。


「うーん・・・・フェリクス、トーリス、床の上にさっきみたいなでっぱりないか?」



床をライトで照らす。

「たぶん、すみっこのほうだと思うんだけどよ。」

「あ、これかな?踏んでみますか?」

「ああ、やってみてくれ。」

フェリクスがでっぱりを踏むとギルベルトの触っていた壁がくるりと回った。

「わっ!!」
「兄さん!」

どさりと兄弟もろとも壁の向こう側にひっくり返った。

「開いたな。こっちもまだしかけは動いたな。」
「ここはなんだ?兄さん。」

ギルベルトをたすけ起こしながらルートヴィッヒが聞く。
壁の向こうは狭いらせん階段が上へと続いている。

「ちょうど、さっきここに来るまでに通った、天井のひくい階段の裏側さ。
城の天守に抜けるんだ。天守から屋根沿いに逃げるルートさ。」

「ひょっとして・・・あの風が抜けるような音って、この階段ですか?」
「ああ、この階段を風が抜けていく時、すげー音するだろ。音しないように工夫してたんだが、いつの間にか壊れちまったみたいだな。」

上を見上げてルートヴィッヒが言った。

「上はどうなってるのか?」

「えーと、この階段がえんえんと続く・・・・。他の階からもつながっててよ。上にいけば、たぶんその上のほうの部屋にも入れると思うけど・・・。」

「おう!ヴェスト、これ持っててくれ。」
ギルベルトは持っていた騎士団の旗を渡す。

「兄さん!これ、ガラス細工じゃないか!!」

「ああ、ガラスで出来てんだよ。ヴェネチアちゃんが作ってくれたんだ。
これ、すげーんだぜ!あン時の最高の職人が作ってくれた!!こんなところに置きっぱなしとは思わなかったけどよ。いたずらで置いたのか?・・・覚えてねえけど・・。」

騎士団の旗は、見事なガラス細工で出来ていた。
赤や黒や黄の発色が素晴らしい。
透明なガラスの中に焼きこまれた騎士団の鷲文様。
これだけの技術が当時あったとは。

「僕もみたいなあ。その細工。」





「へ?ああ、んなら、お前見にこいよ。俺、上に行ってみるぜ!」

「いっそ、お前たちも上がってきてくれないか?ついでに懐中電灯を持ってきてくれ!暗くて上のほうは何も見えん!」
フェリクス達もおっかなびっくり梯子を登り、狭い橋を渡ってきた。どうやらこの橋は非常に硬い木で出来ているらしい。それになにか、塗料のようなものをぬって壁と同じ色にしてある。

らせん階段の部屋に着くとルートヴィッヒがガラス細工を渡す。

「な、なにこれ!すごく重い!!」

「この技術・・・。すごいね・・。」
「展示品にしたいねえ。」


ギルベルトはかなり上のほうまで登っていってしまっている。

「おーい。こっから先は部屋へはいけねえや。崩れてるし、壁の仕掛けもうごかねえ。」


「おい、トーリス。その懐中電灯かしてくれ!ここになんか書いてあんだよ。」

「あ、はい。今もってきます。」