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【ヘタリア】兄さんが消えない理由 マリエンブルク城編2-3

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ぐるぐると上に登っていくと、ギルベルトとルートヴィッヒが階段の壁に書いてある文字を眺めている。

「暗れーとよく見えねえな。ラテン語みたいだけど・・・。」
「ラテン語だと俺には読めんな。」

「懐中電灯・・・・お待ちどうさま・・・。」

息が上がってしまったトーリスは、階段の下を見下ろす。ものすごく・・高い!

「えへへー俺は登らんよー、リトー!そこ、どう見ても、ここからだと10階分くらいあるし!!」

「くそー!だから登らなかったのか!!ちゃっかりしてるよ。ポーは!」

「読めるか?兄さん」

「はっきりしねーなあ・・・。ずいぶん薄くなってる・・・もっとこっち照らしてくれ。」


ギルベルトが壁に書かれた文を読み始める。

「・・この壁に我、マクシミリアン・フォン・ユンギンゲンの最後の言葉を記す。
・・・マクシミリアン・・・・・・・・?・・・・・ユンギンゲン・・・・
マックス・・!!・マックス・・か・・・・!!こんなところに・・・・・・・!!」

ギルベルトが食いつくように、壁を照らし、見つめる。

「昔の騎士か・・・。ユンギンゲン・・・・?」

(どこかで聞いたことがあるような・・・・?兄さんの騎士団の何代目かの総長・・だったか?)

ギルベルトが壁の文字を読み始める。

「我は・・・もうすぐ神に召されるだろう・・・・。しかし、今、我に・・・後悔は何もない。戦って死ぬるは我の望み。
ああ、神よ。ただ一つ、我が・・・・最後の・・・望みを聞き届けよ。
・・・・我が誇り、・・・・・我が・・・我が・・・・・・・愛しき・・・・・ギルベルト・・・・。
・・・・・・願わくば、・・・・・・その御身に・・・・・・・
・・・・神・・・・の・・・・恩寵・・・をたまわらん・・・・ことを。」

ギルベルトの目から涙がこぼれおちた。

ルートヴィッヒはその文の最後の文字を見つける。

1410年 ×月×日

(1410年・・・・・・タンネンベルク!タンネンベルクの戦いか!!)

(どこかで聞いたことがあると思った・・・・・・。ユンギンゲン・・・。それじゃ・・・このマクシミリアンというのは・・・。タンネンベルクで討ち死にした当時の総長の親族か何かで・・・・・にいさんの仲間・・・。)

「・・マックス・・・・・・・お前・・・・こんな・・ところに・・・。」

ギルベルトの声が震える。
涙がとどめなく流れ落ちる。

ふと上を見たルートヴィッヒはあることに気がついた。

「兄さん・・・・・・。」

「・・・・・・・・・・・・。」

「兄さん・・・・・この上にも・・・・何か書いてあるんだ・・・・・。」

ルートヴィッヒはらせん階段の壁に書かれたすりきれた文字をいくつも見つけた。

ギルベルトはふらりと立ち上がると、文字のあるほうへ登っていく。

「ギルベルトさん・・・・。」

  
 それらの壁には、騎士たちの最後の言葉が刻まれていた。
ナイフやおそらく血で書かれたであろう黒くなった文字。



    我、ハインリヒ・フォン・ローテンシュタインは記す。
   今から最後の戦いに出る。城壁に取り付いた櫓を取り払わなければ。
   我らが、神の恩寵よ、我が友、ギルベルトよ。我が忠誠と我が命を御身に捧ぐ。
   永遠にあれ!


    我、コンラート・ロイス・フォン・チューリンゲンは、ここに最後の言葉を記す。
   今夜半、城の外にて、敵をせん滅せす。これが最後の突撃になるだろう。
   神よ!我が誓いを守らせたまえ!
   命尽きるまで、この身を、我らがギルベルトに捧ぐ。
   我が騎士団の誇りと供に。

    
    我、ミヒャエル・フォン・ヘルドルンゲンは記す。
    
    
    我、マルティン・フォン・ブラウエンは・・・・・・。

一体、何人の騎士たちがここに文字を刻んだのだろう。
彼らはタンネンベルクの戦いの時、敵に囲まれた城の中に、外から逃げ込もうとする仲間たちのため、血路をひらくため、城を出て行った決死隊の騎士たちだった。
城に逃げ込もうとする仲間の中に、ギルベルトはいた。

激しい攻防の中、城壁の中に逃げ込んだギルベルト達の姿を見て、この騎士たちは微笑みながら、敵の刃を受け、次々に息をひきとっていった。

そんな彼らの最後の思いが、この壁に刻まれていた。


ギルベルトが仲間たちの犠牲を今まで知らなかったのを、ルートヴィッヒ達は後で知った。


「う・・・・・うう・・・ああっ・・。」

ギルベルトは階段に座り込むと声をあげて泣き始めた。


「兄さん・・・・・・。」

ルートヴィッヒがギルベルトの隣に座って、肩に手を回す。

「しばらく、城のほかのところの調査に行ってますね・・・。」

トーリスが気を利かせて言った。

「ああ・・・。すまんな・・・・。」

「いえ・・・・。」

(昨日も今日も、この兄弟のどっちかが泣いてるところばかりに出くわすな・・・。
この城にギルベルト君を呼ぶのは、よくなかったかなあ・・・。)

「リト、お前、今、あいつら呼ばなかったほうがいいって思ったろ。」
「え?ポー・・・なんでわかるの?」

「お前の考えなんてすぐにわかるしー!でも、ちがうんよ!」
「ちがうって・・・なにが?」

「あいつら、ここでゆっくり考えればいいんよ!」
「考える・・・・。」

「そう!本当に消えるのか、そしたら、今、自分たちがどうしたいのか考えるんよ!」
「何・・ポー。急に・・・。」

「俺さ、あいつ見てて、いっつも変な奴って思うけど、今まで消えなかったのは、なんかわけあると思うンよ。」
「まあ、そのわけがわかれば・・・・消えないんだろうけど・・・。なにかあるんだろうね・・・今までギルベルト君が消えなかった理由が・・・。」

「それを見つけんのは、あいつらの仕事だし!!」

トーリスは笑ってしまう。こういうところはフェリクスは現実的だ。

「そうだね・・・見つけられるといいね・・・。」



暗いらせん階段の上で座りこんでいたギルベルトが静かに言った。

「ヴェスト・・・・・。俺・・・しばらくこの城にいていいか?」

「にいさん・・・・。」

「この城の中を調べたい・・・・。他にも、俺の仲間の残したもんがあるかもしれねえ・・・。」

「そうだな・・・兄さん・・・・。世界遺産になるのなら、いろいろな整備が必要だろう?俺も手伝うよ・・・。手伝わせてくれ・・・・。」

「・・・ああ・・・・ありがとう・・・ヴェスト・・・。」

二人はらせん階段を下りると、地下の部屋を出る。

ギルベルトはまっすぐに先ほど祈りをささげた礼拝堂に向かう。

「ヴェスト・・・俺さ・・・しばらくこの城にいて、修復の手伝いするよ・・・。お前は仕事あんだろ?


先に帰ってていいぜ。」
「兄さん!」

「心配すんなって・・・・。ぜってーに、この城が世界遺産に登録されるまでは消えやしねーからよ。」

「だけど・・・。」

「ここのな・・・・礼拝堂とか・・・あっちにもこっちにも、まだ崩れてて直ってないところいっぱいあるだろ?それを全部・・・・・元通りに戻したい・・・。昔の・・・みんながいたころの姿に戻してやりたい・・・。」