二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

【ヘタリア】兄さんが消えない理由 マリエンブルク城編2-3

INDEX|5ページ/9ページ|

次のページ前のページ
 

「ああ・・・・わかった・・・兄さん・・。でも、俺も手伝う。俺も一緒にここにいる。」

「・・・・・・わかった・・・手伝ってくれ・・・ヴェスト・・。」

それからギルベルトは礼拝堂の崩れ落ちた祭壇の前にひざまづき、長い長い祈りに入った。

ルートヴィッヒはそんな兄を見守り続ける。

祭壇の前を通った何人かの観光客が不思議そうに見守っている。

(ああ、もう一般人が入ってくる時間なのか・・・・。)

世界遺産に登録されるといううわさを聞きつけて、マリエンブルク城には今までよりも多くの観光客が集まっていた。
観光客たちは祈り続けるギルベルトを見て、自分たちもほんの少しの間、祈りをささげ、そして、礼拝堂を出て行った。

ふと、視線を感じて、ルートヴィッヒは振り返る。

何人かの観光客に交じって、じっとこっちを見ている青年が一人。

「あ・・・?!バッセンハイム司教?!」

青年はくるりときびすを返すと、他の部屋へと行ってしまった。
今は亡き、バッセンハイム司教にそっくりだった・・・。
ギルベルトに忠誠を誓い、ドイツ騎士団として認めるように力を尽くしてくれた司教・・・。
晩年は、そのため、地方に追いやられたが、地道に奉仕活動を行う誠実で温厚な人物だった。

彼のもとでギルベルトはよく一緒に祈っていた。

(見間違いか・・・・。最初にあったころの司教にそっくりだった・・・。まさか・・亡くなった司教が兄さんに・・会いに来た・・・とか・・・な・・・。)

現実的でない思いにルートヴィッヒは自分で笑ってしまう。

ここ2,3日、感情が揺さぶられることが多すぎて、感傷的になっているのかもしれない。

「ドイツさん・・・いいですか?」
「ああ、なんだ?リトアニア。」

トーリスがいくつものデジタルカメラを抱えている。

「写真を撮っていくのを手伝ってほしいんですよ。あ、この礼拝堂だけでいいですから。
がれきの中で使えそうなものは全部使うらしいので、破片の写真撮って、コンピューターで元の姿を再生してみますので・・・。」

「そんな面倒な事しなくていいぜ。」

ギルベルトが祈りをやめて立ち上がる。

「俺様が全部もとの姿は覚えてる。それをもとに修復しろや。」

ギルベルトが元の俺様口調に戻っている。

「わかりました!じゃ、この城の中、全部思い出してください!」
「ああ!やってやろうじゃねーか!!」

「設計技師とか建築士を呼んでますから、その人たちにそれぞれの部屋がどうなってたか説明してください。ああ、そうだ。カメラ持ってきましたから、この部屋とか全部写してくださいね!」
「おおよ!こき使っていいぜ!俺様、やる気だかんな!!」








そのころ、アントーニョはようやくローマ市内の聖ヨハネ騎士団、今の正式名称
「ロードス及びマルタ、エルサレムの聖ヨハネ病院独立騎士修道会」への「入国」を許された。今は、国連のオブザーバー国として加盟している「マルタ騎士団」として知られている。
「ヨハネ騎士団」と名乗っていた時、アントーニョは自国の貴族の子弟たちを何人もここへ騎士として送りこんだ。
彼、パオロ=ヨハネ騎士団はアントーニョ=スペインを覚えているだろうか。

待合室へと通されたアントーニョの前に現れた男・・・・。
長身細身の、柔和な顔のパオロが現れた。

アントーニョの体から緊張が抜けていく。
そうだった。彼、パオロは「騎士」というよりも、柔和な神父、それもいかつい大聖堂の神父ではなく、素朴な村の教会にいて、村人たちの相談に乗っていそうな優しい風貌の男だった・・・。

「久しいですな。スペイン殿。」
「本当に…久しぶりやな・・・。元気そうでなによりや。と、急な会見の申し込みを受けていただいて感謝しておるん・・おります。」

柔和な顔がさらに優しく笑った。
「堅い口調は苦手でありましょう。昔のままで結構ですよ。」
「すまへん・・・・俺はお堅いの苦手やねん・・・。」
「で・・・。この度の急な会見の申し込み・・・・いかがなされた?ギルベルトの件だと伺っておりますが。」
「そう・・・そうやねん!!知ってるなら、話が早いわ!ギルベルト・・あいつ消えかかってるねん!俺らはそれを止める手段を探しているねん!!」
「消えかかっている?ギルベルトがですか?彼は大人しく消えるような者ではないでしょうに。」
「そうなんよ!なのに、今回はあかん!あいつ、自身でそれを止めようともせん!今は昨日の記憶も、のうなって、たまに姿が消えかかって見えることもあるんよ!!それも、「ドイツ騎士団」のバッセンハイムっちゅう司教が亡くなってからなんや!何か、「騎士団」としての手掛かりがあらへんか思うて、あんたに会いにきたんや!」
「・・・・・私が言うべきことなどありませんが・・・・ドイツ騎士団の司教が亡くなったとたんに、ギルベルトに異変?彼が「騎士団」でなくなったのは、もう遠い昔でしょうに。」
「そうやねん!!なんで今頃になって、そんなことになっとるのか・・・。俺にはわからへん!でな、「ドイツ騎士団」へ行って聞こうとしたんやけど、慇懃無礼に追い払われてな。でも、あんたんところ・・・・ヨハネ騎士団のところへ行け、言われたんよ!」
「今の騎士団は、昔の騎士団とは異なるものでありましょうに・・・。この私ですら、劇的な変化を遂げて、ようやく今の姿となりましたゆえ・・・・。」
「でもな、あんたに会えば、今のドイツ騎士団が秘密にしとることがわかるだろう言われて来たん!なあ、お願いや!なんでもいいんよ!ギルちゃんがなんで急に消えようとしとるんか、あんたにわかることないか?!」
「まず・・・・祈られませんか?スペイン殿。今でも私は修道騎士。マルタ騎士団・・・・ヨハネ騎士団は修道会であるのです。」
「・・・・ああ・・・・失礼やった・・・。では、ご案内いただけますか?祈りの場に。ヨハネ騎士団殿。」



アントーニョは聖堂へと案内された。
ローマ市内の喧騒をよそに、そこには明るい光の差し込む祈りの場があった。
祭壇の前にひざまづくと、アントーニョは静かに祈り始めた。

(どうか・・・・どうかギルちゃんが消えんようになりますよう!!何か手掛かりがみつかりますよう!!)

アントーニョの祈りの声が、聖ヨハネ騎士団=パオロに響きはじめた。





(ここは本当にロシア領の街なの?!)

フランシスは目の前に広がるにぎやかな街の様子に目を見張る。
ソビエトの領土となってからケーニヒスベルク、今の名はカリーニングラードとなった街は、麻薬の取引や暴力事件、犯罪の絶えない荒れた街となっていた。ソ連の不凍港として、軍港としての拠点となるはずが、本国の有力者が来るのを嫌がるほどの犯罪都市となっていったと聞いていた。
フランシスもある程度は覚悟して来てみたのだ。
いざとなったら、逃げ出すときの脅しの銃も、こっそりと忍ばせてきた・・・・・。
それがどうだろう?
今は、犯罪が起きるほう不思議なくらいの明るさと活気、自由な雰囲気に満ちた街。
川と、近くにある海からの風がさわやかに吹いている。