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【ヘタリア】兄さんが消えない理由 マリエンブルク城編2-3

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しかも、ロシア領というよりは・・まるでヨーロッパ。それもドイツの街並みを歩いているような街の景観・・・・・・。
(ああ・・・そうか・・・・・ここは今、「ヨーロッパへのスラブ側の出口」と言われてるんだったっけ・・・・・。)

東プロイセン。ギルベルトの、本拠地。
彼の過ごしてきた時間が刻まれている街。

フランシスは、街の中をゆっくりと歩きながらところどころに残るギルベルトのいた時代の痕跡を探す。
ふと、大戦中に爆撃され、外観だけを残した元ドイツ騎士団のインステブルク城のポスターが目に入った。
観光局の前に張られたこのポスターをフランシスは食い入るように見つめる。

「あんた、その城へ行きたいんか?」

突然後ろから話しかけられた。
驚きのあまりとびあがりそうになったが、なんとか押さえて後ろを振り向いた。
そこには、明らかにゲルマン系と思しき風貌の男。

「インステルブルク城の騎士フェスティバルは今年はないよ。あれは2年に一回しかやらないんだ。」
「城の騎士フェスティバル?!そんなのをやっているんですか?!」
「そう・・・・。あんた知らないで来たのか!なにかい?観光じゃないのにケーニヒに来たのかい?」
「・・・ケーニヒ・・って!!こ、ここ、ケーニヒって言うんですか!?今も?!カリーニングラードじゃなくて?!」
「ん、まあ、もうソビエト時代じゃないからねえ。ここに住んでる住人はみんなこの街を
ケーニヒスベルクって呼んでるよ。正式にはカリーニングラードなんだがね。」
「それで・・その・・大丈夫なんですか!?だって、ここ今もロシア領・・。」
そこまで言うとフランシスはあわてて、口を閉じてあたりを見回した。
すると目の前の大柄な男が笑った。

「なんだねえ。そんなソビエト時代じゃあるまいし!警戒するこたあないよ。どこにもスパイなんていやしない。この街はなあ・・・もともとドイツ人の移民と騎士団で発展したんよ。騎士の城があったインステブルクなら、ここよりももうちょっと騎士時代のものが残っているよ。見たいのなら。」
「み、見たいですけど・・・!それよりも・・・ケーニヒって呼んでて・・・。なんでですか!?それはドイツ人がつけた名前なんでしょう?」
「ん?そりゃあなあ・・・。この街はロシア・・・・スラブっていうよりは、ヨーロッパだって思わないかい?この街並みとか、気候とか・・・。」
「・・でも、大戦後、住人はみんなロシアから移ってきた人だって聞いてたので・・。」
「まあ、ドイツ人じゃないわな。でもなあ・・不思議なんだが・・・ここはロシア・・・スラブじゃなくて、ヨーロッパだよ。どっちにしても。まあ、こういっちゃなんだが、ロシア本国と離れてるせいで、やっぱりヨーロッパに近くなってきてるんだよ。住民はロシア人なんだがね。」
「・・あなたは・・・ドイツ人なんですか?!」
「ん・・・俺はドイツ人が半分入ってるがね。俺の息子は・・・・まあ、意識としちゃあ、ロシア人っていうよりも「ヨーロッパ人」って感じかねえ。そういうあんたは何かね?フランス人か?」
「え、はいそうです。フランスから来ました・・・。」
「フランスさんかい。よくまあ、こんなところまで・・・・。でもまあ、宣伝してくれないかな。ここはもうかつての荒れた街じゃない。スラブ側のヨーロッパへの出口だよ。観光でも、貿易でも格好の場所なんだ。気候もいいし、きれいな海もあるし、リゾート地としても理想のところなんだ。あんたの国の人はバカンスするだろ?ここはどうだい?安全だし、食べ物もヨーロッパ式だし、物価も安いよ。長期滞在するにはもってこいだ!」
「・・・観光局の人なんですか?あなたは。」
「いや、ただの街の雑貨やの親父だよ。あんたがこのポスターをずっと見てるからな。ちょっと案内してやろうかな、って思ってね。」
「ありがとうございます!!助かります!!実は、ドイツ騎士団の遺構とかドイツ植民時代の建物が論文のテーマなんですよ!!フランスの騎士の城とちがって、ドイツ騎士団の城は要塞としての・・・」


フランシスは、この雑貨やの親父から、知っている限りの知識を引き出した。
そして、かつての騎士団の残りとでもいうべき建物や、街の遺構を知ることができた。
そして、フランシスが驚いたことに、本国ロシアでも地方へ行くと、いまだにソビエト時代の古い方式で経済がなりたっているところが多いというのに、ここ、カリーニングラードは、まさにヨーロッパそのもの。
ヨーロッパとなんの違いもない、街の様相と商店が並んでいる。

街の中で彼らに話を聞く。
そのたびに出てくるのが「ケーニヒスベルク」という名。
誰もがここを「ケーニヒ」と呼んでいる。
あの親父だけではないのだ。

「ケーニヒ」。明らかにドイツ語のそれを呼んでもいい時代だということか。
住民たちは、「ロシア」から「ヨーロッパ」へシフトしようとしている・・・・・。
海の目の前にはスカンジナビア半島が広がりデンマークもスウェーデンも近い。隣を見ればポーランド・リトアニアまで、ヨーロッパ資本のリゾート開発の波が押し寄せている。

そんな話を聞きながら、ふと、古い小さな教会を町はずれで見つけた。
なぜかそこへ入ってみたくなった。
古い錆びた鍵のついた木戸を開けて、中へと入った。
ステンドグラスが美しい光を祭壇に写している。

数人が祈りをささげている。
神父がにっこりと笑いながら、フランシスを手招いた。
そして、フランシスは、不思議な声のようなものをここで聞いた・・・・・・・。















ギルベルトとルートヴィッヒは城の中の調査に取り掛かった。
中世の姿のままに、ドイツ騎士団が暮らしていた時の姿に戻す作業が始まった。

中庭に立てられたドイツ騎士団の総長たちの銅像を見て、ギルベルトは苦笑する。
「こいつら・・・こんなにハンサムじゃなかったぜ!」

騎士たちがらせん階段に刻んだ言葉も、ラテン語から翻訳されて記録に残された。
ルートヴィッヒはそれらの言葉を見て、兄と仲間たちの絆の深さを思う。

(これほどまでに、兄さんはみんなから愛されてたんだな・・・・。)


ペリカンの像が載せられた井戸や、高城から中城への木組みの通路など、次々と元あった城の姿が設計図に起こされていく。

途中、本国に帰らないルートヴィッヒに上司から矢の催促があったが、仕事をポーランドに持ち込んでのカン詰め作業を続けた。

兄から離れられない・・・・・。
消えてしまいそうな兄から目を離せない・・・。

前日の記憶が無くなる事は続いたが、ギルベルトは以前よりも元気そうに見えた。
しかし、ちょっと目を離すとどこかへ行ってしまう。
そんな時、ルートヴィッヒは気が狂いそうな気持ちで、兄を城じゅう探しまわったが、それもいつしか解決された。

ギルベルトはふといなくなる時、必ず、礼拝堂で祈りをささげているのだ。
少しずつ修復されていく礼拝堂は、ほとんどギルベルトがレンガを積んで直していった。

作業をやめない時もあり、そんな時はルートヴィッヒも一緒に手伝った。

ドイツの仕事は遅れがちになり、そっちはギルベルトが手伝った。