二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

【ヘタリア】兄さんが消えない理由 マリエンブルク城編2-3

INDEX|7ページ/9ページ|

次のページ前のページ
 

忘れていたが、ルートヴィッヒが小さい時、ギルベルトはすべて国政を自分でやっていたのだった。
しかも優秀な軍人でもあるギルベルトは戦闘の指揮をし、その忙しい軍務の中でも実務をこなしていた。

統一の後、何もしない兄を見ていて忘れていたが、ギルベルトは実に合理的で実務的な行政の達人でもあった。
積んであった書類が次々に処理されていくのを見て、ルートヴィッヒは兄のすごさを改めて認識する。

(俺はまだまだ、足元にも及ばんな・・・・・。)

「おい、こっち終わったぜ。そっちよこせ。」
「ああ、ありがとう。兄さん。これが終わったらもう今日は休もう。こんな時間だ。」
「おっ。そうだな。明日はポーランドの偉い奴らが来るって言ってたしな。」

書類を片付けて、ベッドに入る。
眠るのも、同じ部屋だ。
ルートヴィッヒは、かたときも兄からは離れない。

部屋の明かりを消して、ギルベルトが言った。

「なあ、ヴェスト・・・・・。」
「なんだ?兄さん」
「そんなに心配しなくていいぜ。俺、今すごく調子いいからさ。まだ当分消えそうにないぞ。」
「・・・・・・・・・。」
「なんかさ・・・・。昨日の事も、少しづつだけどよ。覚えてられるようになってきたし・・。」
「本当か!兄さん!」
「ああ・・・・。もう昨日までの事をメモに残しておかなくても大丈夫そうだ。」
「そうか!!」
「でもよお・・・・なんでだろうな・・・。この間まで、俺、もう覚悟するほどおかしかったんだけどよ。
「・・・・・・・・・・・・・・。」
「今はすげー、充実してるから大丈夫だぜ!!ほんとに心配するなよ!」

ギルベルトは隣に横になっているルートヴィッヒのおでこにキスをする。

「兄さん・・・・・・・。ひょっとして、働いてるからなのか・・・?」
「なんだよ!そりゃ!」
「働きだしたら、とたんに元気になったな・・・兄さんは・・・。
統一後、だらだらしていたから兄さんは消えかけてたのか・・?」
「お前・・・ひでー事言うな・・・・。せっかくお兄様がキスしてやってるっていうのに・・・。」

ルートヴィッヒは兄の頬にキスを返して、言った。

「まだ心配なんだ・・・・。兄さんが消えない確証が持てるまで・・・。」
「・・・・・・・。」
「・・にいさん・・・・」
「大丈夫だ・・・おれは・・・さあ、お休め。ヴェスト。」
「ああ・・・・・。お休み・・・兄さん・・・。」

ギルベルトは静かに歌いだす。

Weist du wieviel Kinder schlafen,  (眠ってる子供がどれくらいいるか知ってる?     
heute nacht im Bettelein?      聖なるこの夜に)

eist du wieviel Traume kommen   (たくさんの夢がどこから来るのか知ってる?
zu den muden Kinderlein?      子供たちのもとに)

この子守唄をあれ以来ずっと歌っている。

歌わないでいるとルートヴィッヒが眠らないのだ。

心配してくれる可愛い弟・・・・・・。
(お前のためなら、いつでも歌ってやるせ・・・・。だから安心して眠れ・・・ヴェスト・・・。
ごめんな・・・・心配かけてばかりのだめ兄貴でよ・・・・。)
 
kennt auch dich und hat dich lieb,   (神はあなたを知っており、
kennt auch dich und hat dich lieb.    あなたを愛している)

静かに夜が更けていった。





翌朝、ギルベルト達が修復作業に城に向かうと、フェリクスが駆け込んできた。

「お、お前・・・・。すぐ来るし!!こっち来るし!!」
「おう、おはようフェリクス!なーにあわててんだよ!」
「早く!!早くこっち来るし!!」
フェリクスにぐいぐいと引っ張られたギルベルトは中庭に連れて行かれる。

「なんだよ?どうしたんだ?そんなにあわてて。」
フェリクスは深呼吸する。
「ふえー。いきなり会わしたら心の準備がって、リトが言うンよ!だからこっち来るし!
「何言ってんだ?説明しろや。」
「だから、来たんよ!!どういうわけか!!お前んとこの!!」
「お前んとこの?おい、わかんねーよ!ちゃんと説明してくれ。」
「ぎゃーーー!!こっち来たし!!俺、もう知らないし!!」
フェリクスはルートヴィッヒの後ろに隠れる。

「「おい、いったいなんだ?来たって誰が来たんだ・・・?」


「そこにおられましたか。バイルシュミット卿。」

凛とした静かな声が中庭に響いた。

困った顔のトーリスは真っ青だ。
数人の男たちに囲まれるようにして、中庭に入ってくる。

ルートヴィッヒはその一団の男たちの中に、先日見たバッセンハイム司教にそっくりな青年を見つけた。

「お迎えにあがりました。バイルシュミット卿。」

トーリスの連れてきた男たちは、一斉にギルベルトの前にひざまづいた。

ギルベルトが青年に気付いてはっと息をのむ。

「我が騎士団の正式な決定をお伝えにまいりました。」

「それは、「現在の」ドイツ騎士団のことか?」

ギルベルトが静かに聞いた。

「はい。バイルシュミット卿。」

「我らがドイツ騎士団、正式なる閣議の結果、貴殿、ギルベルト・バイルシュミット卿を我らが「騎士団の象徴」として認め、我らの一員としてお迎えにあがりました。」

「・・・・・・・・・・・・・!」

「何の連絡もなく、またバッセンハイム司教の葬列に、貴卿をお呼び出来なかった非礼はお詫びいたします。しかしいま・・・・・。」

「あなた様をわが騎士団にお迎えにあがれる喜びで、我ら一同、誇りに満ちております。」

「・・・正式に・・・・・。俺を迎えに・・・?」

ルートヴィッヒの胸が震える。

ギルベルトは冷静に聞き直した。

「ギルベルト・バイルシュミットは、「プロイセン」となる時、お前たちと決別した。それを了解しての決定か?また、ドイツ帝国の設立者として、第3帝国の中枢として、東ドイツとして何をやってきたか。それらをすべてを承知の上か?」


「はい。あなた様が何をしてきたかも、承知しております。
あなた様の、過ち。それを償おうとする努力。
シベリアでの、あなた様の贖罪。
それらはすべて存じております。
過ちというなら、我らにもございます。
バッセンハイム司教を無念の死に追いやったのは我ら。
あなた様の存在を知りながら、あなた様の声を聞きながら無視していたのも、我ら。
しかし、もう、どの騎士団員も、言い逃れの出来ない現象・・。いえ、われらにとっての奇跡が起きました。」

「奇跡・・・・?」

「はい・・・。バッセンハイム司教の亡くなりましてから、あなた様の声は我らに届かなくなりました。このところ、あなた様の存在を我らが感じることがまったくなくなっておりました。しかし、先日、あなた様の声が我らに届いた・・・。」

「私のような若輩の者も聞いたのです。あなたの声を。」

先日ルートヴィッヒが見た青年がひざまづきながら、顔をあげて言う。
その目はじっとギルベルトを見つめている。

「ちょうど、騎士団全体のミサが行われている時でした。