結界師 小さい良守と火黒 他
火黒との出会い
「良守」
屋上で惰眠をむさぼっていた良守は掛けられた声にむくりと起き上がった。
「火黒…。お前来るなっていってんのにどうしてくるかな?」
「だって、良の側にいたいしさ」
「烏森は…危ないんだよ」
「でも、オレはお前の妖。どんなときでも側にいたいもんなんだよ?」
「わがまま」
「良のことだけね」
そういって、良守の横に一緒に寝転がる。
「…まったく」
良守は苦笑する。
火黒とあったのは偶然という中の必然だったのかも
知れない。
烏森の仕事帰りにあった妖。
一目で強いと思った。
だが、その妖はこういった。
『キミの側にいてもいい?』
その言葉を聞いたとき、何かがはじけた。
誰も傷つけたくない。
誰も死んでほしくない。
誰もいなくなるなんて…嫌だ。
ならば、自分の側には誰も近づかない方がいい。
大切だから、守りたいから、
だから、余計に…側にいてほしくなかった。
『オレは強いから死なないよ? 側においといてもいなくならないよ?』
その言葉に知らずに涙が流れた。
そして、その妖を火黒を側に置くことらに決めた。
「…本当に不思議な奴」
「何?」
「なんでもない。…おやすみ」
「うん、おやすみ。後でおこしてあげるよ」
「頼む」
暖かい体温
信じてもいいと初めて思った者
良守は目を閉じた。
作品名:結界師 小さい良守と火黒 他 作家名:とーすい