黄龍妖魔学園紀 ~いめくらもーどv~
同じそれでも、意味が違った。村雨は、ぎゅっと京也の手を握った。
「いやん」
「だから俺はアンタラと同じ年齢だっつーとろーが!」
「いやー、ホント変わんないよねー、村雨くん」
へらへら笑う京也の手。それにヨーカンにささった爪楊枝を握らせる。
「って、ああっ! 俺のヨーカン!」
「うるさい」
そのまま、大口で京也のヨウカンを食べる村雨。自らが手にしたものへの惨状に、京也は悲鳴を上げる。
「食い物で争うな見苦しい。子供か」
あまり美味しそうにも見えない村雨の表情(かお)を見、如月はわざとらしいため息をつく。
さめてきた茶をあおり、口中の甘味を流し込むと、村雨は元の作業に戻った。しばし、みーみー騒いでいた京也も荷物をまとめて立ち上がる。
「――しかし――本気で断りたいなら、口ぞえはするぞ、京也」
如月の言葉に、京也は居間を出ようとしていた足を止めた。そして、しばし考えた後、ゆっくりと言葉を選ぶ。
「うん。……なんつーか、イメクラぬきでも、やりたい話じゃないんすけど」
「ああ、全く。どういう風の吹き回しだい?」
「まー、俺も、いちおー修羅場くぐってきたわけじゃないっすか」
「控えめな言い方だな」
「うん。で」
京也は自らの頭を指した。
「ひびくんすよ。ああ、ヤバいな、って。……でも、本物のハンターさんがちょい心配だから、如月くん、そっち方面では口ぞえよろしく。必要経費と情報の援助はもらえると嬉しいんだけど」
「本物?」
怪訝そうに、村雨が聞き返した。
「ロゼッタ協会の人違いがきっかけなんすよ。エジプトで拾った情報端末(PDA)の持ち主と勘違いされて、地下遺跡探検してきました。いやあ、世界文化遺産スリリングツアー」
軽い口調の京也に、残りの二人は黙り込んだ。
「……やはり、これが終わったら少し考えよう。取引は」
「賛成するぜ若旦那」
しばらくの後、二人は同じ感想を漏らして、ため息をついた。
作品名:黄龍妖魔学園紀 ~いめくらもーどv~ 作家名:東明