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婚約者 [黒後家蜘蛛の会二次創作]

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「まあ、それはそれとしまして」ピアスンが言った。「そんな様子だったので、これならば大丈夫だろうとケネスも思った矢先に、今度はいきなり離婚するという電話がマーガレットから掛ってきたというわけです」
「ううーん」テーブルに落ちた沈黙を破ってゴンザロが言った。「そのマーガレットは、離婚の理由はなんだと言ってるんですか?」
「ケネスが聞いたところによると、『自分のわがままだ』と言っていたらしいです」
「わがまま、ね」ゴンザロがオウム返しに言った。
「今はボストンにいるそうです。そちらへ引っ越すときにケネスが会ったらしいですが」
「ボストン?」ホルステッドが言った。「事故のあった場所ですね。何か関係があるんですか?」
「仕事の関係らしいです。事故の際もそのために行っていたようなんですね」
「仕事探しですか。半年前から?」ルービンが言った。「じゃあ、事故のときから離婚は織り込み済みだったということですか」
「それもまたなんとも言えません。なにしろ離婚の理由がわからないんですから」ピアスンは首を振った。「ボストンへ行くときにケネスが『イングラムと何かあったのかい?』と聞くと、首を振って『イングラムさんとは何も。ボストンの仕事もイングラムさんの助力があったからなんです』と下を向いて答えていたそうです。
「そのあと、気になることを言っていたそうです。『ジェニファーさんに会うことがあったら、私が謝っていたと伝えてください』と。それからいきなり泣き出したということなのです」
「どういう意味かね、その謝ってほしいというのは?」ドレイクが言った。
「わからんね」ピアスンはゆっくりと首を振った。
「わたしはわかる気がするね」ホルステッドが思うところある声で言った。みながそちらを振り向いた。
「なんだ?いやに自信がありげだな」ルービンが言った。
「まあ、私の考えを言う前に、最後まで話を聞こうよ。そしてどうなりましたか?」ホルステッドがピアスンに先を促した。
「ちょっと待った。その前にピアスンさん、マーガレットはジェニファーのことを知っていたというわけですね?」ゴンザロが言った。
「どうもそのようですな。ケネスから聞いた話では」
「ケネス氏のほうもお嬢さんをよく知っているのですか?」
「いえ、顔くらいは知っていますが、あまりよくは知っていません」ピアスンは気が重そうに言った。「実は、先に言った入院後のイングラム家訪問の際、ジェニファーを近くで見かけたらしいのです。そのときは見覚えのある顔だというくらいしか思わなかったらしいのですが……後で思い出したそうで。
「そこでその後マーガレットに聞いたら、すでにジェニファーのことは知っていたらしいのです」
「知っていたのはまあいいとして」ゴンザロは考え込みながら言った。「近くで見かけたってことは、そのころにはすでにイングラムとお嬢さんは復縁していたんでしょうか」
「知りませんね。詳しいことは聞いていませんので」ピアスンは不機嫌に言った。
 しばらくの沈黙の後、ドレイクが先をうながした。「そして、その後はどうなったんだ?」
「あとは、先週になって娘が結婚すると言い出したということだけです。時期はこれから決める、上の息子も引き取って暮らす、と」
「ほう」ドレイクが言った。
「イングラムもそのつもりだと言ってました。家族なんだから一緒に暮らすのは当たり前だ、とね」ピアスンはそこで大きく息を吐いて言った。
「わたしが知っているのはそこまでです」
 しばらくの沈黙の後、アヴァロンが息をついて言った。「たしかに、腑に落ちないことの多い話ですな」
トランブルが唸るように続けた。「腑に落ちない上にあれやこれやと目まぐるしいですな。イングラムの勤め先にも覚えが悪いんじゃないですか」
「それはそう、そのようですね。ただ、有能なので今のところ特に地位に影響はないようですが」

「さて、それでは私が思いついたことを言ってもいいですか」ホルステッドがもったいぶって言った。