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【腐向け】西+ちびロマSS・4本セット

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オランダの木靴


「んー……、痛てぇぞ……」
 椅子に座り、足をプラプラと揺らす。靴は床に転がり、ロマーノの小さな足には赤い擦り傷が出来ていた。
「ロマーノも大きくなってきとるんやなぁ」
 ベルギーが笑いながら救急箱を出し、靴擦れとつま先の消毒を始める。まだまだ小さいと思っていた子供は確実に成長しているようで、今まで履いていた靴のサイズが小さくなり、足に合わなくなっていた。
「新しい靴、買わなあかんね」
 早速手配しようと思い、兄を思い出す。オランダの木靴は有名なもので、履き心地もいい。どこかいい商品を扱っている店はないか聞いてみようか。
 足が痛いからふて寝するという弟分を見送り、ベルギーはオランダの執務室へ行くことにした。

「お兄ちゃん」
 扉から顔を出し、兄が忙しくないのを確認する。手早く状況を説明すると、オランダは背後の戸棚から何やら袋を取り出した。その袋の中から出てきたのは、うさぎの絵が描かれた白い木靴。状態を確認すると、満足げに頷く。
「これ履かせてみよっせ」
 もしかしたら少し大きいかもしれないがと置かれるそれを見て、ベルギーは腕を組み前々から考えていた言葉を口にした。
「前から思ってたんやけど……、うさぎ……趣味なん?」
 兄がロマーノに与えるものには、大抵うさぎが入っている。エプロンのアップリケ、子供用のカップ、ハンカチの刺繍に木靴。小さい子供が動物モチーフの物を見につけているのは大変可愛らしいのだが、それにしてもうさぎばかりなのが気に掛かった。
「……俺が使っていたら、みっともねぇのぉ」
 やや肩を落とし、そう残念そうに呟く姿に吹き出しそうになる。背の高い強面男性がうさぎの刺繍のハンカチを使う姿は、確かに厳しいものがあるだろう。
 どうやら兄は、弟分に身に付けさせる事で我慢しているらしい。特に気にせず着ているロマーノに気分を良くしているのか、言葉数は少ないものの二人の仲は良好だった。
 ついでにとオランダはうさぎのぬいぐるみを出し、靴も一緒に持って二人はロマーノの部屋へ移動する。兄の手の中にある人形をちらりと見て、ベルギーは恐る恐る突っ込んだ。
「ロマーノは男の子やさかい、人形は嫌がるんとちゃう?」
「あいつはにんならんよ」
 重要なのは肌触りであり、形はあまり気にしないのが弟分だ。そこを突いての、うさぎプッシュ。なるたけ肌触りのいい布地を選んだ白うさぎの人形は、きっとあの子のお気に入りになる筈だ。
 力説する兄を半目で見つめながら、ベルギーは自分の中で膨れ上がる思いを感じていた。
(ずるいわ……)
 唇を尖らせながら、オランダからお勧めの靴屋を聞き出す。場所をしっかりと記憶し、ベルギーは予定を組み立てた。

「ロマーノ、これ履いてみね」
 ベッドの上でぐうたらしていた子供の前に、白い木靴を出す。まだ赤みの引かない小さな足を入れれば、するりとはまった。
 ただ少しだけ大きいのか、靴の中で足が動く音がする。
「ちょっと大きいぞ」
「靴下履けばええ。また足は大きくなるやろ」
 成長を喜び、オランダはロマーノの頭を撫でた。その手を恥ずかしそうに受け入れる子供は、靴の絵がうさぎという事にはまったく突っ込まない。
「ついでにこれもやるでの」
 そっと弟分の目の前に、先程のうさぎの人形を出す。流石に人形に興味は無いのか、ロマーノは眉をひそめた。
「ぬいぐるみなんていらねぇ……、あ!」
 何かに気付いたのか、顔を輝かせてうさぎを受け取る。嬉しそうに探る手を見つめていると、人形の首に下がっていた袋を取り外したようだった。
「何ついとったん?」
「……飴や」
 小さい声で、隣の兄に聞いてみる。答えは簡単で、食欲旺盛なロマーノは飴の袋に気付いて釣られたらしい。
 甘い飴を頬張り、子供は嬉しそうに人形を抱く。ご機嫌な彼はうさぎに頬摺りをし、その肌触りに満足して抱き締めた。
「な、大丈夫やろ」
 白いうさぎの靴を履いた可愛い子供がうさぎのぬいぐるみに頬摺りをしている光景を、うっとりと見つめる兄が少し怖い。オランダの望む通りの光景を振り切るように、ベルギーは部屋を飛び出した。
 目指す先は自分の部屋。勢い良く扉を開け、クローゼットの奥に隠した物を取り出すと、またも走ってロマーノの部屋に戻る。
「お兄ちゃんばっかりずるいわ!」
「ベルギー?」
 驚いて目をぱちくりとさせる子供の前に、先程自室から持ってきた物を出す。黒い布地を広げながら、なるだけ優しい声でお願いした。
「ロマーノ、これ、これも着てみて?」
「……ケープ?」
 子供用の黒いケープは、暖かくて柔らかい布地を選んで作って貰った特注品。胸元をボタンで留めてやり、仕上げとばかりにフードを頭に被せた。
「……可愛ええっ……!」
 フードの部分についているのは、猫の耳を模した三角形の布地。更にケープの下部分にはしっぽもついていた。黒猫デザインのケープを羽織る子供に感動し、可愛さのあまり抱き締めてしまう。
「べ、ベルギー! 苦しいぞこんちくしょーめ!!」
「ああ、もうかわええ! お兄ちゃんばっかり、ロマーノ着せ替えしてずるいわぁ」
 ずっと自分も着替えさせたかったのだと告白するベルギーに、オランダが大きく溜息をつく。着せ替え人形ではないと注意しようかと思ったが、気持ちは分かるので黙っていた。
「やっぱり黒猫は可愛ええわぁ」
 小悪魔的な可愛らしさが、ツンツンとしたロマーノに似合っている。そう漏らせば、兄が小さく反論した。
「いや、白うさぎが似合うやざ」
 愛らしい子供には、天使の白こそ至高。そこは譲れないと言うオランダと、同じく譲れないベルギーが睨みあう。
「……黒猫や」
「白うさぎ」
 視線で火花を散らす二人から逃げるように、ロマーノは怯えながら部屋の扉を目指す。そろりと扉を抜けた先には、目や鼻から液体を流してうずくまるスペインが居た。
「ヴァアアア! す、スペイン、何か怖いぞコノヤロー!」
 恐怖の先にまた恐怖。怯えるロマーノを素早く抱き締めながら、スペインは拳を握り締める。
「なんなん、うちの子分ら可愛すぎるやろ……!」
 絶対に独立なんてさせはしないと誓う親分に気付かず、兄妹の対立は続いていく。
優しい兄妹は睨みあい、頼れる親分はあちこちから液体を流している異常な状況。ロマーノは早くこの場から逃げたいと、半泣きのまま、スペインの腕の中で暴れに暴れた。
「何でもいいから、放せこんチクショーめ!!」
「ふふふ……放さへんで……!」
「怖いんだよ、お前! オランダ、ベルギー! 助けろコノヤロぉ〜……」

 この日以降。季節毎に、スペインの屋敷では黒猫・白うさぎ戦争が勃発するようになる。それと同時期に、スペインの「うちの子分はみんな可愛い病」が発症するのだが、子分三人からは冷ややかな目で見られるのみだった。


END