【腐向け】西ロマSS・7本セット
真夜中のミステリー
いつものように服を脱ぎ、ベッドに入る。スペインは寝巻きを着ていて、自分は裸。それは冬でも変わらず、ロマーノは今まで特に気にしていなかった。
「んー……」
ふと真夜中に目が覚める。
傍のぬくもりに寄り添い、スペインの匂いに安心した。
いつものように抱きしめられて眠る夜。暖かい布団の中でうつらうつらしていると、そういえば何時もこの体制だなと気付いた。
スペインと眠ると、いつも彼に抱きしめられている。
(……何か、悔しい)
男としては、やはり好きな相手を抱きしめて眠ってみたいものだ。子供の頃は体格的に無理だったが、今の身長があまり変わらない状態ならいけるだろう。
甘やかされるのに慣れ過ぎて気にしていなかった事を、真夜中のテンションで真面目に考える。
「よし!」
そっと体を上にずらし、スペインの頭を抱きしめる。息が素肌に当たってくすぐったい。
(ちょっと可愛い、かも)
熱を求め、子供のように擦り寄るスペインに微笑みが零れる。
普段は出来ない事をしようとゆっくり頭を撫で、額にキスを贈った。まるで子供をあやすような仕草に、笑いを堪える。我ながら何をやっているのだろうと頬を緩め、暖かくなった胸の内に満足してまた眠りに沈む。
腕の中に大切な人。
それがこんなにも幸せで、スペインがいつもこの体制になる気持ちが良く分かった。
優しい手に撫でられている。
その手をもっと、と求めて目が覚めた。
目の前に広がる肌色に、自分が抱きしめられている事に気付く。
(何や、これ……)
顔を少し動かし、眠るロマーノの顔を見上げた。いつもと変わらぬ寝顔に、何があったのだろうと考える。抱きしめられた頭が、少しだけ恥ずかしい。
(何時の間に逆に?)
確かにロマーノを抱きしめて眠った筈なのに、起きたら逆転しているとは。
ぐるぐる考えていると、頭の上でロマーノが小さくくしゃみをした。自分の頭を抱きしめている為にずれたのか、肩が枕の上に乗っている。そのせいで布団から出てしまい、冬の寒さに肩が晒されていた。
(あかん、風邪引いてまうわ!)
えいやっと自分の頭を抱く腕を外し、目覚めない恋人に安堵しながら抱きこむ。布団をきちんと掛け直し、冷えた肩を手で温める。眠るロマーノの首筋に頬を寄せることで熱を分け、全身で自分の熱を彼に移した。
腕の中で安らかな寝息をたてる姿に、頬がつい緩む。
いつまでたっても可愛い子。
抱きしめられるのも悪くはないが、やっぱり自分の腕の中で安心して欲しい。閉じ込めたい程の独占欲を、毎晩のこの腕でごまかしているのは内緒だから。
(俺の世界の中におって)
幸せそうに微笑んで眠るロマーノの額にキスを贈り、また目を閉じる。
眠りの世界への扉は、あっさりと開いた。
朝、先に起きるのはロマーノの方。
その日もいつも通り、先にロマーノが目覚めた。
「……あれ?」
目覚めた視界に映るのは、スペインの寝巻き。確かにスペインを抱きしめて眠った筈なのに、いつもと同じ目覚めに驚いた。あれは夢だったのだろうか。
「んー……?」
顔を上げれば、スペインの寝顔。やっぱり抱きしめられている。
体を上げたときの枕の冷たさを覚えているし、夢ならば変にリアルだ。胸に残っている、スペインを抱きしめたときの幸せ。あれも夢だったのだろうか?
(まあいっか、また今夜にでもやろう)
あの幸せを感じたくて、ロマーノはそう心に決めた。
それ以来、二人は毎晩首を傾げる。
(またスペインを抱きしめる夢、見たな……)
スペインを抱きしめた筈が毎回直され、また夢かと首を傾げるロマーノ。
(また逆になっとる……。もしや、俺がロマの懐に潜り込んでるんやろか?)
繰り返される逆転に、自分の寝相を疑い始めるスペイン。
……不可思議な夜の真相解明は、もう暫く先。
END
作品名:【腐向け】西ロマSS・7本セット 作家名:あやもり