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【腐向け】西ロマSS・7本セット

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2月のアメジスト


 世界会議後、久しぶりに悪友三人で集まり酒飲みをしていたら携帯にSOSが届いた。
 SOSというか、ご本人様からの説明不要の通達というか。
「しゅぺいん、こっちこいこのやろー!」
 耳に入るのは、分かりやすい泥酔状態。日頃そんな風には飲まない彼には珍しい姿に驚いていると、向こうでヴェネチアーノが携帯を変わった。
「スペイン兄ちゃんごめんね〜。兄ちゃん、すっごく酔っちゃってて……」
 申し訳なさそうに話すヴェネチアーノの後ろで、呂律が回っていないロマーノの声と押さえるドイツの声が聞こえる。あれだけ酔っていては、一人で動けないだろう。
 律儀なドイツが担いでホテルへ送ってくれそうだが、それは恋人として自分が複雑な心境だ。泥酔相手で万が一の可能性も考え、心が狭いとは思いながらもスペインはロマーノを引き取る事にした。
「イタちゃん、今何処いるん?」

「ロマ、しっかりせえ!」
「うるせーぞ、このやろおー……」
 友達より恋人優先かよという声を背中に聞きながら店を飛び出し、素早くロマーノの傍に駆け寄る。ぐでんぐでんに酔っ払った恋人は立つ事も出来ず、結局スペインが背負う形で収まった。
 ホテルの部屋までの道のりを、酔っ払いの相手をすながら歩いて行く。普段の彼なら、人前でおんぶの姿は盛大に嫌がるだろう。だが今の酔っ払いは羞恥心が消えているようで、むしろ積極的に腕を絡ませ首に抱きつく有様。
 首が苦しいが、密着する体は嬉しい。いつも照れ屋で人前での接触を嫌がる恋人の有難い行為に、思わず顔がにやけた。
「しゅぺいーん」
「はいはい、もうちょっとやで〜」
 会話になっていない会話を続けながら歩き続け、ようやくスペインのとったホテルの部屋へ辿りつく。一人くだを巻いている恋人をベッドに下ろし、まずは水を飲ませようと用意した。
「珍しいやん、こんな呑むの」
 女の子の前で格好悪い姿は晒したくないと、割と自重するタイプだった筈。コップを渡し隣に座ると、ロマーノは水を飲みながら腕を上げた。
「これ」
 下がったスーツの袖から覗くのは、紫の石がついたブレスレット。揺らす手からこれを見せようとしているのは分かるが、念の為これが原因かと聞き返す。まったく意味が分からない。
「ブレスレット?」
「あめじすとのぱわーでよいにくくなるって、にほんがいって……」
 眠そうな酔っ払いが話すには、天然石のアメジストには悪酔い防止の効果があるらしい。それを日本から聞き、本当にそうなのか飲みまくったそうだ。その結果が、この泥酔。怒りも呆れも通り越し、思わず笑ってしまう。可愛い子分は、まだまだ子供のようだ。
「ほんま、アホやな……」
「なんらとー!」
 力の無い頭突きを受けつつ、酒臭いスーツを脱がしてやる。このまま寝てしまえば、明日起きた時にスーツの皺について文句を言ってくるだろう。予想出来る姿に苦笑し、気を使って次々脱がしていく。ロマーノのスーツをハンガーに掛けた所で、背後から抱きつかれた。
「すぺいん……」
 酒が入ったせいで、熱い体温。呂律が回っていない声に、甘えるような仕草。普段の恋人ならありえない行為。泥酔最高と心の中で叫びつつ、スペインは慌てて自分のスーツを脱ぎ椅子に投げ捨てた。ハンガーに掛ける時間がもったいない。
「ロマーノ〜!」
 甘いお誘いに飛びつき、二人でベッドに飛び込む。体の下の恋人を撫でながら、ふとアメジストの持つ効果を思い出した。少しだけ考え、手を這わせてブレスレットを外す。ゴムで繋がっていたらしい石は簡単に取れ、サイドテーブルの上に放り投げられた。
(『冷静』なんて効果、あったら困るわぁ)
 ここで正気に戻られても困る。今夜は珍しい恋人を堪能するのだと、念の為に行う行為に自分で吹き出した。効果を信じて泥酔するロマーノも、効果を恐れて外させる自分も似たようなものだ。
(こういうの、何て言うたかな……。似たもの夫婦?)
 何という例えが適当か考えていたら、焦れたロマーノに殴られた。謝りながら体を倒せば、腕が首に回される。引き寄せられるまま頬をすり合わすと、耳元で熱っぽく囁かれた。
「ん……。すぺいん、すき……」
 いつもなら行為の最後、気を飛ばした状態でなければ聞けない言葉がもう出てくる。今からこれでは、この先は何を言ってくれるのだろう。胸が期待で膨らんでいく。一言一句漏らさず聞こうと心に決め、赤い頬にキスを贈って答えた。
「俺も愛しとるで〜!」
 素直に気持ちを吐露する恋人に煽られながら、行為は熱を孕んでいく。背負うのは大変だったけれど、積極的な恋人はおいしい。今度は二人の時に酒を勧めてみようと、スペインは密かに企んだ。

「畜生……、効果無かったじゃねーか……」
 朝、気だるげにベッドに沈んでいたロマーノがそう言った。まだ酒が残っているのか、痛むらしい頭を押さえている。結構信じていたらしい恋人の頭を撫で、スペインは笑いながら慰めた。
「でも、俺には悪酔いせぇへんかったやろ?」
「……っ、ヴァッファンクーロ! ……いてててて」
 実際には外していた事は伏せ、効き目あるのかもと言った言葉は真っ赤な顔で否定される。
「もー、アホやなぁ」
「アホって言うな、アホスペイン……」
 自身が出した声が頭に響いたらしく、涙目の恋人に吹き出すと睨まれた。可愛い恋人をあやすように撫でながら、スペインもベッドへ戻る。チェックアウトまで時間があるので、もう少しだけ二人で寝ていよう。
 抱き合い眠る二人の傍には、朝日に光るアメジスト。
 愛のお守りの効果は、ここでひっそりと実証されていた。


END