着ぐるみの着心地はいかが?快新編
そして俺達は今、
キラキラの装飾のフロートの上にスタンバイ中。
格好も変化した。
俺の格好は短かった耳は伸び、アホ面だったのが比較的カッコイイ。
兵隊の格好でもなくなり、膝までの長いマントが付いている。
腰の部分には兵隊でさえ持っていなかったサーベルがささっている。
極めつけは大きなシルクハット。
快斗はというと、
デブだった体系は随分とスリムになった。
足を思う存分動かせるかと思いきや、装飾されたドレスが邪魔しているようだ。
そして靴はいつの間にか5センチほどのヒールのある靴。
そして腰の部分には大きなリボン。
極めつけは大きなティアラ。
そう完全に主役。
着替えのときにもみくちゃにされて俺はぐったりしていたが、
快斗は違う意味でぐったりしていた。
…まぁそれもそうだろう。
「いくら代理が居ないからってなんで俺がお姫様なんだ!!!!」
主役を演じていた二人がついに暑さにやられた。それが本番10分前。
俺たちが担当していたキャラクターは消去法でまっさきに消され、
今日だけのバイトだから元気もあるだろうと判断され、強制的に決定された。
そして5分前の現在、俺たちはスタンバイ完了したわけだ。
俺はもうやるしかないと思っているのだが、快斗はどうやら不満が消えないらしい。
「動きやすくなったじゃねぇかよ。」
「そうだけど。」
「やりたがってたパレードだぞ。」
「うん…。」
「ほら。」
「…え?」
失敗続きの果てにお姫様役になってしまった快斗が流石に可哀相で、
なぐさめようと、俺は快斗に手を差し伸べた。
初めは確かに乗り気じゃなかった…というか嫌だったが、
今日1日を振り返ると結構楽しかったと思う。
珍しく失敗続きの快斗も見ることが出来て面白かった。
だから、最後ぐらいは二人で思いっきり楽しみてぇ。
「どうぞお手をお姫様。」
「…何だよ・・それ。」
意表をつかれたのか初めは驚いたが、
下を向きブツブツと言いつつ快斗は俺の差し伸べた手に手を重ねた。
それと同時に音楽が鳴り始めた。
前方のフロートが徐々に動き出しフロートの間にスタンバイしていたダンサーも前へ進み踊り出す。
「快斗、楽しもうぜ。」
「…言われなくとも!!!」
「その調子その調子。」
音楽と踊るダンサーに影響されて快斗はすっかり機嫌をなおした。
今きっと快斗は笑ってるんだろうな…
着ぐるみで見えない表情を少し残念に思った。
スタッフから声がかかり、俺たちが乗ったフロートもいよいよ動き出した。
作品名:着ぐるみの着心地はいかが?快新編 作家名:おこた