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虹の作り方

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「・・・・時々は会いにきてやれよ」
「デスマスク」
 ずっとバルゴと語り合っているうちに、すっかり時間が過ぎていたことにシャカは気付く。どうやら既に酔いつぶれているものもいたようだった。
「こーんないい女、振りやがって。なぁ?バルゴ様。絶対こいつなんかより、イイ男捕まえろよ?んで、見返してやれ」
「・・・そうだな・・きっと私よりも素晴らしき者が彼女を守るだろう。そういえば、君は振られたことがあるそうだな、キャンサーに」
「うるせっ余計なお世話だ。俺は拝み倒して、ちゃんと縁りを戻したさ。バルゴ様もこーんな冷血漢に未練などしなければいいのによぉ〜」
 チンっとデスマスクは黄金色の乙女が祈る手にグラスを当てた。
「生と死を共に過ごしたからな・・・なかなかに絆深いものなのだろう。だが・・・・彼女もまた私とは違う道を進む。もう・・・私と会うこともあるまい。今日はその報告をしてくれた」
「そう・・か」
 デスマスクは僅かに寂しげな表情をしたが、すぐに普段の顔に戻った。シャカは彼のそんな小さな優しさが好ましいと感じていた。色々なことをこの男が教えてくれた。あんまり役にはたっていなかったが、彼に教わったひとつがようやく役立ちそうな気がした。
「―――別れのときは・・・・今までの感謝の気持ちを贈るように、そして、美しい思い出となるようなキスをする・・・だったな、デスマスク」
「ああ、そうだ。・・・・邪魔者は退散しようか」
 そう言ってひらひらと手を振りながら、デスマスクが皆のところへ向かっていく後姿を眺め、そっとシャカは感謝した。
 一層騒ぎが大きくなる中でシャカは瞳を閉じて心静かにバルゴと向き合う。その瞼の奥では様々なことが去来していた。こくりとシャカは小さく頷くと瞳を開いてバルゴを優しく見つめた。
「―――愛しき君に・・・・幸あれ」
 シャカはそっと黄金色に輝く乙女に口づける。
 ふわりと黄金色の風がシャカを包み、バルゴの柔らかな囁きが聞こえた。


―――おめでとう、シャカ

―――愛しい貴方の誕生の日を祝いましょう

―――おめでとう、シャカ

―――愛しい貴方の新しき人生に幸あることを願いましょう



Fin.

作品名:虹の作り方 作家名:千珠