虹の作り方
虹の彼方 2
「もうひとつの人生・・・か」
去年催されたシャカの誕生日で思ったことを唐突に思い出した。なぜ、思い出したのが今日なのだろう・・・そう不思議に思いながら。
『もしも、あの時・・・』などということを考えるのは、今まで自らが歩んできた道を否定するような気がして考えたりしたことはなかったのだが、今まで培ってきたものを捨て去り、聖域を去ったはずのシャカがあんな風に微笑む姿を目の当たりにしたことで、少なからず胸の内に衝撃を与えた。
『いい表情をするようになったな・・・』
喜びの中にも一抹の寂しさを感じさせたサガの言葉も、微かに心を揺るがせた。
―――もやもやとした霧が心を覆い尽くす前に、晴らしたい。
そう思ったシュラは悪友ともいうべきデスマスクの元へと向かった。
『そんなことは直接あいつに会って、聞けば?』
突然会いに行ったら迷惑だろう?と戸惑いをみせるのにも構わず、『ぜんっぜん、大丈夫だって!あいつも喜ぶだろうから』と言い含められ、結局シャカの住まう場所まで行く羽目になってしまったシュラはデスマスク曰く、シャカが現在『生息』しているという、閑散とした邸の前で呆然と立ち尽くしていた。
「――はっ!いかん、何か土産になるものでも持ってくればよかった・・・」
空の両手をじっと見つめても何か出るわけでもないのだが(せいぜい出ても脂汗ぐらいだろう)ちょっとした失態に既に意気消沈気味であった。
出だしからして良くない・・・ということで、日を改めて会いに来ようと、逃げ腰気味に背を向けた時、勢いよく何かにぶつかった。
「わっ!?」
「ぅわっ!」
避けることもかなわず、見事にドサッと尻餅をついた相手に慌てて「大丈夫か?」と手を伸ばした。イスラム圏でよく見かける白いディスターシャを身に纏い、白い布を被ったその男はよく見ると、見覚えのある顔だった。