虹の作り方
「おまえ―――シャカか?」
「―――シュラではないかね・・・珍しい人物が訪ねてくることは分かっていたが、君だったとは・・・」
伸ばしたシュラの手を掴んで立ち上がると、シャカは毀れるような笑みを浮かべてみせると「ありがとう」と小さく呟いた。驚いたような表情でシュラが見返すと、「何かね?」と不思議そうに眺めた。
「いや・・・おまえに礼を言われるなんてな・・・何だか調子が狂う・・・と思っただけ。それに、その恰好。宗旨替えしたのか?」
仏教から回教か?と付け加えると、シャカは尻についた砂を払っていた手を止めて、ただでさえ大きな瞳を真ん丸に見開いたかと思うと、カラカラと笑いたてた。
人影がまばらな通りとはいえ、その鈴の鳴るような笑い声を不思議そうに眺める好奇の眼差しが、なんともいえず気恥ずかしくなったシュラは、腹を抱えて笑いのツボに嵌っているシャカを引っ張るようにして敷地内へと移動する。
「おい!笑いすぎだろう!?そんなにおかしなことを言った覚えはないぞ、俺は!」
「・・・ああ。すまない・・・あまりにも突拍子もないことを君がいうものだから・・・つい」
眦にうっすらと涙を浮かべながら、笑いを堪えるシャカにムッとしながらも、「茶ぐらい出せよ?」と凄んでみせると、小さくシャカは肩を竦めながらも一人では広すぎる感のある邸内を案内するのだった。