虹の作り方
「・・・ふ〜ん、なるほど。デスマスクの仕業か」
「色々な服を持ってきては着せたがるのだよ。何とかならんか―と思うのだが、たまにこういった良いものも持ってくるので好きにさせている」
ずらりと床に敷き詰められた衣装の数々。
どこから調達してきたのか?と疑いたくなるようなものまであった。(明らかに女物だろうというものももちろん含まれていた)
そんな怪しい衣装の中で、シャカは今着用している衣装をよく着ているということだった。
「気に入っているのか、それ?」
白が眩しいその衣装は割合似合っているとも思う。白い袈裟姿に近いというのもあるのだろう、妙な安心感を覚えた。
「ああ。陽射しが強いときには布切れをこういう風に被せて紐でくくるといい具合だ。私の髪色は目立つしな、丁度隠れていい。それにターバンは重いが、これだと頭も軽くて風通しも良いから気に入っている」
「ターバン・・・おまえが?巻いたりするのか?」
そういえばこいつはインド人だったな・・・と改めて思うシュラである。
「おまえって人種も宗教も関係ない感じだな・・・」
ついでに性別も、と言い掛けたがそれはかろうじて胸の内にしまった。
「そうかね?そう云われると、あまり関係ないかもしれぬ。どちらも人が作ったもの、枠組みでしかないと思えば、実につまらないものだからな。でも大多数はそれに縛られている・・・哀しいことだがな」
ふうわりと窓から差し込む微光を心地良さそうに受けながら、瞳を閉じたシャカは穏やかな風のように口元を緩めた。そんなシャカを眺めていると、どんな風に切り出そうかと考えていたこともスルスルと滑らかに口をついて出た。
「縛られる、か。もしも、別の道を歩んでいたら、俺はどんな風に生きていただろう、とおまえが聖域に帰って来た時、思った。そして、今日、そう思ったことを思い出した」