虹の作り方
「俺は―――ずっと聖闘士として生きていかなければ、おまえのようにすべてを捨て去ることはできない。怖い、そう・・・怖いんだ、俺は。何もなくなってしまうことが。残るものが血塗れたこの腕だけだということが。そうなったとき・・・俺は俺を許せない」
「違う、シュラ。捨てることも時には必要だろう。でも、捨てることだけがすべてではない・・・そう思う。例えば、これを着てみたまえ」
「・・・へ?」
真面目な話をしていたのに急に話の腰を折られて、肩透かしを食らったシュラはグイと押し付けられたソレをまじまじと見つめた。シャカ、相変わらずやることがよく判らない男だ。
「だから、それを着てみたまえ」
デスマスクの貢物―――趣味を垣間見せるような衣装の中で、少し気になっていたものをシャカは目敏く選び出してシュラに着てみせろというのだ。
「着られるのか?サイズ合わないのでは?」
「大丈夫だろう。調整はつけられるはずだ。さぁ、モタモタするなら、私が着せてやろうか?」
「・・・悪夢にうなされそうだから、自分でやる」
意味が分からないまま、もう、半分はヤケになりながら、服の上から藍染めのソレを器用に纏う。
「着たことがあるのかね?」
「ああ、昔デスマスクとお遊びでな」
キュっと絹を締める音を小気味よく鳴らすとシャカは満足そうな笑みを浮かべた。
「―――よく似合っている。私では今一つ締まりがなかったが、君が着るとあつらえた様だ」
するとシャカはシュラの手を掴むと、違う部屋へと移動した。
「おい、どこへ行くんだ?」
「黙ってついてきたまえ」
そう云って連れて来られて場所は大きな鏡のある部屋だった。