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虹の作り方

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「確かここいら当たりのはずだが・・・あ、あそこか!」
 古ぼけた寺院らしきものを見つけ、足早になる。
 木々に覆われた門をくぐると元気のよい子供たちの声と今まさに死の時を迎えようとする人の姿。
「混沌を絵に描いたようなところだな・・・・」
 きょろきょろと周囲を見回しながら奥に進んでいく。不審そうに見る人々の目を気にするでもなく、目当ての人物を探した。
「―――いた」
 長い髪を一纏めにしてはいるが、ここでは特異な容姿であるから簡単にその姿を見つけることができた。
 別に隠れる必要などないと思いながらもつい、木陰に身を潜めて様子を伺う。シャカは数人の僧侶とともに一人の老人の前に座り込んでいた。老人の枯れ枝のような手を取りながら、静かな微笑を口元に浮かべていた。
 ほどなくして、シャカは数人の僧侶に何か話しかけるとこちらに向かって歩き始めた。
「バレバレか?」
 シャカほどの人物なら易々とバレるではあろうと思っていたが、案の定デスマスクの前に立ち、蒼い瞳を差し向けた。
「・・・よう」
「―――こんなところまで何用かね?」
「わかってんだろ?」
 ふっと小さく笑うとシャカはくいと顎をしゃくった。ついて来いという意味だろう。
「けっこうな暮らしのようだな・・・」
 寺院から離れて土煙の立つ整備されていない砂利道をのんびりと歩き、喧騒から隔絶されたかのような邸に着く。シャカ一人では広すぎる邸は静寂に包まれていた。
「私には不要なものだと辞退したのだがな。一生食うに困らぬ暮らしができるほど、わたしはどうやら働いていたらしい」
 他人事のように、そして聖闘士を職業のように言うシャカの台詞に苦笑する。
「・・・だったら、俺も贅沢三昧できそうだな」
「かもしれぬな。聖闘士を辞めればの話だが」

 
作品名:虹の作り方 作家名:千珠