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【ヘタリア・仏&加】イヨマンテ(魂送り)

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 慌てた彼はその光球の精霊、ウィルオウィスプに話しかける。だがそこに彼が見つけたアメリカ大陸……チビアメリカがやってきて、それを面白そうに手でぱぁんと叩いて潰してしまったのだった。それ以降イギリスは、アメリカの大地で精霊を見る事は二度と無かった。
 イギリスは当時の光景を思い出し、膝を着く。
 自分がもっと早くあの大陸を発見していれば、そう、アメリカの大地がヒトの形を成す前だったら、きっとウィルオウィスプだけでなく、他の精霊も多種多様に生存していただろう。減少を通り越して遂に絶滅してしまった理由は、か弱げな彼らを面白がって潰したアメリカ以外他ならない。勿論アメリカに対してはお尻ぺんぺんの刑にしたが、もう何もかもが遅かった。(そしてアメリカには“くたばれイギリス!”とただ逆恨みをされただけだった……。)
「……この北の大地に精霊が多くいるようなら、フランスに仕掛けるにも持ってこいだ。今のフランスにはこれまでの植民地維持で精一杯、本国は手薄だ。そこを突けば、新大陸は放棄せざるをえないだろう。……そうなれば、この大地はその下を押さえているこっちの物。」
 イギリスはだんと樽に片足を掛ける。
「あの大地こそ、この俺が! 精霊込みで、確保する!!」
 その言葉に、イギリスの傍にいたティンカーベルは喜びにふわふわと飛び回る。
「はは! スピリット(精霊)を敬い大事にし、友のような関係を結べるヤツの方が、その大地にとっても喜びってもんだ!!」
 イギリスの足元には、一角ウサギが頬を摺り寄せる。その際、その鋭い角がイギリスの脛に刺さり、イギリスは“いてっ”と小さく呻いた。



 カナダは再びあの毛皮を纏い、胸には子グマを抱いて、雪原をざすざすと歩いている。瞳は暗紫色でその惑いを表すかのように不安げに揺れている。その理由は、初めて会った自分以外の“ヒトの形”に他ならない。それを思えば、子グマを抱きしめる力は一層強くなる。
“アノ人ノ形、何者ダ?”
“知らない。悪い人じゃなさそうだけど。”
 カナダと子グマは、自分たちの言葉で会話をする。
“食ベ物ヲ受ケ取ッテシマッタナ。”
 子グマのその言葉に、暗紫色の瞳は一層揺らぎ、その歩みは遅くなる。
“……わからない、わからないよ。”
“ソウダナ、アレクライジャ、ワカラナイナ。”
 子グマが何を言わんとしているのか、カナダにはわかっている。
“俺ノ送リ主ハオ前ダ。……ソシテ又オ前モ、誰カニ送ラレル物デ有ル”
 その言葉にカナダはこくりと深く一つ頷いた。
 カナダは右手をそっと、自分の頭部を覆い守る、クマの頭部を確かめるように撫でる。
“……僕はこの大地そのものだから、かの人がこの僕に恵み与えてくださるのなら、僕も又彼の人に送られよう。”
 子供の、子供とは思えない声の重さとその密度に、クマはすっと先の大地を見る。その現在は、ただ雪一面の凍える大地。
“コノ地ガ、恵ミ多ク、幸アラン事ヲ。”
 子クマの言葉に“大地”は頷き、自分の生まれた源へと戻って行った。



 春。停止していたかのようなこの大地に、再び時間が流れ出す。遠い真っ白な山々は、雄叫びを上げてその雪を振るい落とし川へと流す。その叫びに目覚めたように、白に埋められた大地は徐々にその顔を緑に染めだし、木々も青々と生い茂りその命を高らかに歌いだす。その歌声に花を添えるような小鳥の声が響く頃には、山の叫びが融けた水が、川に歌を教え出す。川面はその喜びを、太陽の日差しを返しながらきらきらと表している。その川の中は小魚がようやく目覚めようとする頃、子グマはその隙をついては魚を獲り、人間の子供はばしゃばしゃと一足早い目覚めを楽しんでいた。
「おーい、カナダ! カナダ!」
 覚えのある声に子供、カナダは顔を上げる。
「こっちもようやく春になったな。」
 金色のたゆたう髪を一つに縛り、フランスは靴を脱ぎ捨ててズボンの裾を捲り上げると、同じように川へと足を浸す。
「冷た!!」
 じゃぶと脛まで浸した足を一気に飛び上がらせて後ろへと戻る。
「おいおいおい、これすっごい冷たいぞ!? お前さん風邪ひいちまうんじゃないか?」
「……へいき、です。」
 その言葉に、おっ、とフランスは目を見開いた後、ゆっくりと微笑み出す。
「……俺の言葉覚えたな。よし、今回も新しい本をたくさん、たーくさん持ってきてるぜ?」
 って、やっぱこの水まだ寒いよ。と、フランスは歯をカチカチ鳴らしながら、川原に木をくべて火を燃やし始めた。

「どう? 今度こそ、あの毛皮の宝物庫へ連れてってくんないかな?」
 川からあがったカナダをフランスは膝に乗せて、二人は火に当たっている。カナダは自分の懐に子クマを抱えながら、フランスから送られた本を手開くと、その文字を指でなぞり始める。その行為にフランスはふっと息を吐き、指された所をゆっくりと読み始める。
「昔々、あるところに、一人の女の子がおりました、女の子はいつも赤いずきんを被っていたので、赤頭巾、と呼ばれておりました……。」
 “作られた話”はカナダの心を強く掴んだ。そのフィクションは、カナダには真実の話しとして映っていた。
 眠れる森の美女、長靴を履いた猫……。そして今回の赤ずきんもだった。しかしその感性は、フランスが予想しているものとは少し違っていた。
「どうして、おおかみのお腹に、石をつめる?」
「おしいおきだよ。二度とこんな事をしないようにね。」
 フランスは優しく説明する。
「おしおき? どうして? 狼は、お腹を空かせていた。それを満たすのは、当然だ。」
 その言葉にフランスは少し思案する。
「レディ達を食べてしまったからだよ。」
「レディ?」
「そう。守るべき、美しくもはかない、か弱い立場の人たちさ。けれど芯は強く、我々が彼の存在により、助けられ、救われる時が多々ある。最終兵器って所だな。レディを多く持つ国は、男達は強く勇ましい者が多いからな。」
 そして当然それは俺の国もだ! とフランスは笑顔でカナダに答える。
「それじゃ、この子も、レディ?」
 カナダは懐に抱いていた子クマの手を上げる。フランスはふっと笑った後、子クマの性別を確認する。
「こいつはちょっと違うな。だが、守るべきか弱いってのは当てはまる。子供は全て、大人に成長するまでは、守らないといけないからな。」
 フランスの言葉にカナダは顔を上げてじっとフランスを見つめる。
「……じゃあ、僕も?」
 その言葉にフランスはふっと笑う。
「そうだな。お前はうんと小さい。」
 フランスはカナダの小さな手を取ると、そっとその甲に口付けを落とした。
「……良かったら、俺に君の成長の一端を担わせてくれないか?」
 カナダはばっと手を引くと、フランスの膝から降りて走り出す。子供の足なので追いつくのは簡単だが、フランスはその背を見送った。
 ――少し難しい言い回しだったから、誤解を与えてしまったか?