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【Secretシリーズ 7 】 Sunshine ↓

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『ハリーが帰って来ないかもしれない』


ハーマイオニーから告げられた言葉が何度も頭の中に響いてくる。
(ハリーが帰って来ないなんて、僕は一度だって考えたことがなかった……)

部屋に戻ってくるとベッドに座り込み、ドラコはうなだれて頭を抱えた。
お気楽な楽天的すぎる自分の考えに吐き気がしてくる。

(確かに普通に考えても、騎士団としての仕事はかなり危険が伴っている。先代からデスイーターに何人も仲間が殺されて、しかも彼の両親もそれで殺されたというのに、なぜ自分はこんなにも何の根拠もなく『ハリーは帰ってくるのが当然だ』と思っていたのだろうか?)
(どうして僕はハリーの生還を盲目的に信じていたのだろう?しょせんは自分事ではなく他人だから、どうでもいいことのように思っていただけなのだろうか?)

(今度こそ、もしかして本当に帰って来ないかもしれないのに……)

「ああ、僕はどうしたらいいんだ……」
ドラコは苦悶の表情で顔をゆがめた。
『あのハリーがこの世からいなくなる』
そう思っただけでドラコは、頭を振る。

(いやだ。絶対にイヤだ。ハリーがいなくなったら、もう僕はどうしたらいいんだ……)
たまらずドラコの薄青い瞳から、涙が零れ落ちた。

記憶の中の彼はいつも、仲間といるときはただ大人しく一番後ろに控えていて、ニコニコと愛想よく笑顔を浮かべているほうが多いくらいだ。
誰の迷惑にもならないように気を使って身を縮めて、人より目立とうとしたり、自慢話をしたりするわけでもなく、本当に出しゃばったところなど何一つもなかった。
「英雄」とみなが尊敬するような奇跡を何度も起こしたのに、下手をすれば逆に誰よりもへりくだって、自分から進んで疲れきっているときですら雑用まで受け持とうとしていた。
悲しいくらいに悲惨で不幸な子ども時代を過ごしてきたから、もうそれは習慣として、彼のからだに深く染み付いてしまっていることなのかもしれない。

時々ハリーはドラコといるときに、とても不安な顔をしていた。
迷子の子どもが見せるような困った表情で、ドラコをじっと見ていることがある。

ハリーは実戦と緊張の日々に鍛え上げられた、しなやかで立派な体格のいい、精悍な青年へと申し分なく成長したのに、どこかがひどく欠けていて幼いのだ。
いつもドラコの前だけはいろんな表情をして、自分の気持ちを手振りまで交えて、一生懸命に相手に伝えようとしていた。
何度も同じことを繰り返したり、抱きしめて掻き口説いたり、切羽詰ったように耳元にささやく。
そうしなければドラコが消えてしまうか、どこかへ去ってしまうのではないかと、必死になってすがり付いてきた。

「ドラコのことが大好きなんだ。本当に好きなんだ」
何度も何度も繰り返される、愛の言葉。
ドラコはそれをまるでただのバックグランドのように聞き流していた。
(ああ、またか……)
と少しうんざりした顔で、ドラコはうなずく。
いつも聞かされていたから、もうそれは珍しくもなんともなくて、ただの日常の挨拶のようなものにまで成り果てていた。

ハリーの気持ちなど全く気にも留めていない、自分。
(ハリーはいつもどんな気持ちで僕にそれを言っていたのだろう?)
ドラコは後悔で胸がいっぱいになる。

「――僕はなんてことをしてきたんだろう……」

ドラコがたまに気まぐれに腕を伸ばして抱きしめ返したとき、ハリーは満ち足りた表情でぎゅっとすがりついて、ずっと相手を抱きしめたまま離そうはとしなかった。
(―――ハリーは不安で仕方がないんだ。いつも自分が愛した人はハリーの元から去っていくばかりだったから、不安でどうしようもなかったんだ)
ドラコは嗚咽を漏らす。

(ああ、ちゃんと言えばよかった。自分の照れやプライドなんか捨てて、ハリーに言ってやればよかったんだ。『僕はキミが大好きで、愛しているから、どこへも行かない』と、何度も何度もハリーが満足するまで言えばよかったんだ………)
(それだけでハリーは安心するのに……。とても安心したのに……。)

『幸せにしたい。誰よりも愛しているから、誰よりも幸せにしたい』

朝日が差し込む光の中、ひざを折り、指を組んで頭を垂れると、瞳を閉じた。
「どうかハリーが無事で帰ってきますように……」
ドラコは迷いを振り切った素直な心で、心から真摯に神に祈ったのだった―――