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【Secretシリーズ 7 】 Sunshine ↓

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やれ「きのうはどんな愛の歌を歌ったか」だの、「誕生日のプレゼントはどんなに苦労して手に入れたか」などののろけ話を、止めなければ延々と続けてしまうほど、自分の恋人の話には非常に熱心で、かなりロマンチストなくせに、こういう自分が興味ないものにはからっきし辛らつに応対する。
本当に父親のジェームズと同様に、ハリーもあきれるほど分かりやすい性格だった。

「そう、つまり絵本そのままの村だ。かなり牧歌的で羊がたくさん放牧されていて、いかにも昔の片田舎の雰囲気だ」
キングズリーはじっとハリーを意味ありげに見つめる。
「しかしきっと君は気に入ると思う。懐かしくて」
「―――なぜです?一度も行ったこともないのに、なぜ僕が?」
掛けていた眼鏡を外すと、テーブルにおいて、キングズリーは言葉を続けた。

「あの村はよく似ているよ、君が生まれて1歳になるまで育ったあのゴドリックの谷に。そういう場所にあったんだ、君のふるさとも」
「ゴドリックの谷に……」
ハリーはぼんやりとした顔になる。そういわれても彼にはイメージがまるで浮かばないからだ。
自分の記憶に全く残っていないのに、その名前を聞くと、とても胸が痛くなってしまう。
自分がそこで生まれ、大切に育てられて、そして両親と死別し、自分がわずか1歳にして魔法界を暗黒の日々から救った英雄として魔法界に名を刻むことになったきっかけの運命の場所だった。

ハリーの瞳が揺れているのに気づいて、キングズリーは優しく言う。
「スレートの石垣で囲まれた壁がどこまでも続いていて、青々とした牧草に広い空が広がっているんだ。のんびりと羊が草を食み、シープドックがそれを見守っている。舗装されていない道が続き、両側にはなだらかな丘がひろがっていて、―――その先に君の家はあったんだ。少しコケが蒸した壁に赤い屋根の小さな家だった」
「そんな場所に、僕は住んでいたんですか?」
「ああ、そうだ」
「それならば、この仕事から帰ってきたら僕はたくさんの絵本を収集しなければなりませんね」
ハリーは照れたように嬉しそうに笑うと、目の前にある残ったものを口にかきこむように平らげる。
「善は急げで、すぐにその潜伏先に向いますよ、キング!」
さっと立ち上がると、ハリーは手を振った。
それがさよならの合図で、一瞬にしてふたりをつないでいた空間が、テレビのスイッチを切るように途切れる。




自宅のダイニングに戻ってきたキングズリーは、オーラーとして立派に成長した今のハリーの姿をあのふたりにも見せたかったと、しみじみと思う。
自分たちに降りかかってきている運命を冷静に受け止めながらも、それでも、とてもハリーの行く末を心配していたふたり。

キングズリーとジェームズたちが出合ったのは、彼らがまだホグワーツに入学したての頃だ。

4つ学年が下の、11歳になったばかりの小柄なジェームズとリリーにねだられて、自分の両肩に彼ら乗せて歩いたこともある。
「ねえキング!あの赤い実は食べれるのかな?」
「暴れ柳って本当に暴れるの、キングズリー?」
大柄な自分の肩にまるで二羽の小鳥のようにとまり、ふたりは彼の耳元で無邪気に質問する。

くるくるとまとわりついて離れなかった。
いくら気難しいふりをしてもそれは無駄だった。
「そんな顔をしてもダメよ、キングズリー!」
「だって僕たちはキングのことが大好きなんだからねっ」
クスクス笑って、ふたりして飛びついてくる。
事あるごとに、彼の背中をよじ登ろうとした。

もう帰ることがない遠いふるさとを離れてきたキングズリーとって、幼い彼らはやわらかく優しく、彼の心を満たしてくれた。

輝くエメラルドの瞳の好奇心いっぱいのリリー。
飛び跳ねた黒髪の、小生意気なジェームズ。

そしてそのふたりのこどものハリーは、現在はオーラーとして自分の部下になっている。
なんという偶然だろうかと、キングズリーは運命の不思議さをつくづく思ったのだった。