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ファーストネイション(北米兄弟)

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「あぁそうだ。俺が誰よりも先に見つけて、ヤツもその誰よりも俺を選んで、俺がしっかり育て中の新大陸で、……ちょっとやんちゃで、バッファローと手を繋いでくるくる回る程度の力持ちだが、まぁ子供だし、想定の範囲内で全然問題ない程度だぜ。」
「何よアーサー、その説明ったら!」
 ティンクの言葉に“うっせぇ!”とアーサーは一喝する。
「どうだ? 会いたいか? 会いたいよなぁ?」
「うん、すっごく会いたいなぁ! 僕の兄弟!」
“バッファローって生き物も見たい! これっくらいかなぁ”と自分の目の前で、子ウサギ程度の丸みを作り、一層目をきらきら輝かせる。
「そうか〜、よーし、カナダはいい子だなぁ〜。そのおとなしい勢いで、アイツのやんちゃを抑えてくれよ〜!」
 そのイギリスの言葉に、ティンクはまたぶっと噴出した。


 馬車の小窓は長くなだらか山脈を右手に映しながら、カナダによって整えられた“道”を南へとひた走る。木の車輪に二頭の馬が飛ぶように駆ける馬車内は大層揺れたが、座席にはカナダの毛皮が幾重にも敷かれ、座るイギリスへの振動を少しでも和らげようとする。そしてカナダは、そのイギリスの膝の上に座っていた。
「イギリスさんは、平気なんですか?」
「あぁ、お前のくれた上等な毛皮があるからな。」
 イギリスは笑いながら座席の毛皮を撫でる。それは特に毛足の長い、上等な毛皮が敷かれている。
「これから行く“アメリカ”にはない技術だな、これは。向こうは全然荒れくれでよぉ、本を渡しても一切読みゃしないんだ。 それにこの“馬車”の技術も全然習得しない。こいつを引く生き物、“馬”と一緒に連れて来たんだが、アイツはこいつを飼いならそうとしないで、コンドルやコヨーテっていう野蛮な獣と、分け合っちまったんだ。」
 イギリスの話を聞きながら、馬車の走る大地が“アメリカ”に入った事を、座るイギリス越しにカナダは感知する。だが、この“馬車”が速すぎて、それだけが精いっぱいだった。
 視線を感じて窓を見れば、連なる山脈を背景に、一羽のコンドルかこの馬車と並走している。それは小指の爪くらいの大きさにしか見える程に距離があいていたが、カナダと視線が合うと、それはついと高く飛翔し、そのこれから訪れる客人を自分の大地の主に伝えるように、その馬車の向かう先へと飛んでいった。



「いらっしゃいイギリスー、……あれ?」
「ようアメリカ、元気だったか?」
 ちびアメリカは、イギリスが抱いている同じような小さい子供に目を留める。
「こいつはカナダ、お前の兄弟だ。」
 すとんと下ろされて、カナダは自分と同じ顔をするアメリカを、うわぁうわぁと身体をぷるぷる震わせて感動する。
「は、始めまして、僕はカナダ……、」
「んー? 俺と同じ顔ー?」
 アメリカはカナダの周りをくるくると回る。
「そうだぞ、アメリカ。お前達は地続きな上に保護者は俺だから、もはや兄弟みたいなもんだ。」
「そうかー。ところでイギリス、お腹空いたんだぞー。」
 アメリカはカナダからイギリスの元へとびゃっと向かい、自分の要望を伝える。
「……お前本当に空気読まねーな。カナダがへこんでるぞ。まぁ昼時だししょうがねぇか。」
 ほら一緒にメシにするぞ。とイギリスはアメリカを抱き上げると、カナダも一緒に抱き上げた。
「イギリスー、今日のご飯はステーキがいいんだぞー。」
「そうだな、それなら塩と胡椒がありゃいいし。」
「ステーキ?」
 カナダの初めて聞く単語だ。
「焼いた肉だ焼いた肉。うまいぞー。」
 イギリスはにこにこと答えたが、彼の“うまい”という言葉は、カナダの知ってる“うまい”とは意味が違う。だが、その料理?をリクエストしたのは、イギリスではなく、今日初めて紹介されたアメリカで、その本人は“ステーキ! ステーキ!”と喜んでいる。
 ――それは本当においしいかも。
 カナダはそれに希望を持ち初めてしまった。


「やっぱりステーキはバッファローに限るんだぞ!」
「そうだな。やっぱりビフテキだよな。」
 イギリスが配下の者を使い用意させた物は、まっ白なテーブルクロスの掛ったテーブルに椅子三脚。上に乗る食器もブルーを基調とした目にも涼しい皿だが、その皿に乗る食材は、まだ中央に赤身と血の滴る、四足の大きな獣をさばいた肉だった。
 そしてそのテーブルの向こうには、その肉を焼いた金網と急いで作られたブロックで作られた焼き場。そして勿論、肉の元である四足の獣、バッファローが、半分以上身体を残して、その体温も温かに仄かに湯気を立たせながら、その傍らに横たわってあった。
 ――う、うわあああああああ!
 カナダは密かにぶるぶる震える。
「ほら、カナダの分も焼けたぞ。」
 英国紳士は下男に指示し、金網の上で焼けた肉をスライスしてカナダの前の皿に乗せさせる。用意された調味料は塩のみ。
「これ、すっごくおいしいんだ! えーと、カナダ?」
 と自分と同じ小さな子供は、その食材を恐れる事無く、口の端から赤い血を垂らして、にこにことそれを噛みちぎる。
「こら、アメリカ、ちゃんとナイフとフォークを使えって言ってんだろ?」
「わざわざ小さく切ったんじゃ、食べた気がしないんだぞ。」
 “そんな事言うなって”とイギリスは甲斐甲斐しく、アメリカの肉を細かく切り分け出す。それに対しアメリカは、顔は笑顔のままだが、握るフォークでざくざくとイギリスを突き刺し、“勝手な事すんな、くたばれイギリス”とやっている。
 その光景にもカナダはどうしていいかわからず、イギリスの周りにいつもいる妖精に助けを求めるが、彼らは姿を消したまま、一向に姿を現さない。
「てぃ、ティンクさん、ティンクさん。」
 小声でその名を呼んで見るが、やはり気配はどこにもない。
「よし、次はカナダのも切り分けてやんな。」
 フォークを刺されて頭から血を流しながら、イギリスはカナダの肉も一口大に切り分けだす。その背後でアメリカは、イギリスの皿の一枚肉を奪い、うまうまと食べ始めている。
「ほら、あーん。」
 イギリスは一口に切った肉をカナダへと向ける。
 切断された面からはまだ生々しい赤さが残り、焼け焦げる外側は焦げ茶色に変化して、身は荒くけばだっている……。
 カナダは覚悟を決めて、それを口に入れた。
「……あれ、おいしい。」
「だろー?」
 その台詞とは裏腹に、イギリスは安堵のため息を着く。
 振りかけられた塩が口内で唾液をわかして、その肉をいよいよ進ませる。胡椒と呼ばれるものがぴりっと舌を刺激するが、それは癖になるようなものだった。
 肉本来の味、というよりも、その塩と胡椒の味のが強かったが、それらのおかげで肉の甘みとうま味だけを感じて、カナダはもう夢中にそのバッファローの肉を食べ始める。
「おいしい、これすっごくおいしいです、イギリスさん!」
 “リンゴと紅茶以外で、こんなにおいしい料理をイギリスさんから頂けるなんて!”とカナダは思わず正直素直にそれを言ってしまうが、イギリスは、自分の用意した食事(もっとも、生産地はアメリカだが)を、おいしいおいしいと久しぶりに喜ぶカナダの様子を、にこにこと見守る。