Hero-ヒーロー-
プライドが人一倍高いマルフォイは、同情を受けるほど屈辱的なものはないことぐらい、容易に想像できるのに、自分はなんてことを言ってしまったんだろうと唇を噛む。
「あの、マルフォイ……。その」
謝ったら余計に火に油を注ぐことになってしまう。
うまい言葉が見つからない。
「去れ!」
ドラコの言葉は素っ気無かった。
完全に相手は怒ってしまい、フォローすることも間々ならず、ハリーは焦る。
(別に昔から嫌いあった間柄じゃないか。何を今更……)
などと思ったけれども、どうしても今回ばかりはこのまま別れることを避けたかった。
なぜだか分からないけれども、後味が悪いまま別れたくはない。
「マルフォイ、僕は……。僕は――」
ハリーは自分の古ぼけた頭を叱咤しつつ、フル回転で必死で言葉を探した。
(ああ、何かを言わなければ、早く!)
焦っている間に、段々と自分をにらみつけている相手の瞳の色が青く濃くなっていく。
怒りのため血の巡りがよくなったのか、そのほほに赤みが差した。
またドラコが口を開き、相手を威嚇するような言葉を告げようとした瞬間、突然ガラスの割れる音が響いた。
――ガシャン!
と派手な乾いた音を立てて、ガラスの破片が部屋に飛び散る。
訳が分からず慌てて振り返ると、玄関脇にある窓ガラスが粉々に砕け、破片がそこらじゅうに散乱していた。
作品名:Hero-ヒーロー- 作家名:sabure