泡沫の恋 後編
人間らしい、って言ったらおかしいんだろうけど。おまえが言うなって感じ?
『うまくいってるのか?』
「あ? 何が」
『情報屋と』
セルティの言葉に静雄はコーヒーをふきそうになり、それから頬を赤らめた。
静雄は可愛いな、とセルティは思った。最近ますます可愛い。
「おまえ、そういうこと聞くなよ」
『何故』
「・・・・・・恥ずかしいだろ」
静雄はこちらを向かずに、小声でそんなことを言った。
やっぱり可愛い。池袋最強と言えども、恋人ができるとやはり変わるものなのだな。
セルティはもう少しからかいたい気持ちになったが、これ以上茶化すのもかわいそうなので追及の手を緩めることにした。
『静雄』
「ん?」
『一つだけ聞いていいか』
静雄は首を傾げてから頷く。
セルティは今一番気になっていて聞きたかったことを、PDAに打ち込んだ。
『幸せか?』
静雄はそれを見て、少し考える顔をした。
ま、まさか不幸なのか? うまくいってないのか? やっぱりあの男は信用できん!
セルティは娘を持つ父親のようなことを脳内で考えていたが、静雄は軽く笑って。
「おまえと同じだ」
とだけ言った。
それから立ち上がると、『ウチに帰るわ』と言ってセルティに背を向ける。
「コーヒー、ありがとな」
静雄、とセルティは呼びかけたかったが、そのまま背中を見送った。
ウチに帰る、か。臨也の待つところへ。
なんのかんの言っても、幸せなんだな。
セルティは心から良かったと思った。
静雄が幸せであるというのならば、これ以上望むべくもない。
少しくらい喧嘩しても、幸せならばいいだろう。少しの限度が他人とは違うが。
あの男なら殺しても死なないだろうしな。
セルティはかなりひどいことを考えて、声を出さずに笑った。
それから、自分も最愛の人間の待つ『ウチ』へと帰ることにした。