Who?
二日後、ロイは執事としてターゲットの住む屋敷に雇われた。
元々働いていた執事を少し動けなくした結果だ。
そしていよいよターゲットとのご対面の時が来た。
この瞬間でだいたいどれぐらいの時間をかけるかが決まる。
ロイにとっては期待が高まり、一番ワクワクする瞬間だった。
ターゲットが待ってるという部屋に案内される。
そしてメイドが扉を開けた。
「お連れしました。」
「ロイと申します。」
振り返ったターゲットは、車椅子に乗った少年だった。
髪の毛は金色に輝き、瞳も同じ色で輝いていた。
しかし、その輝きとは反対に体は痩せ細り弱弱しいという印象だ。
だが、ロイはそんなことは気にしていられなかった。
「・・・・え・・ど?」
その少年の姿はかつてロイが愛し、失った恋人と瓜二つだった。
「レイル・カインです。よろしくお願いします。」
名前が違う。だが、確かにエドワードの声とそっくりだった。
「ロイ…さん?」
「あっ…申し訳ありません。」
ロイは頭を下げたが、頭の中がぐちゃぐちゃになっていた。
ロイの恋人だったエドワード、
エドワード・エルリックは一緒に軍で働いていた部下だった。
ロイはエドワードを心の底から愛していた。エドワードもまたロイのことを愛していた。
軍という男社会において同性愛者は普通に存在するが、この二人は誰から見てもお似合いで微笑ましかった。
だが、ある日ロイの元にエドワード・エルリック殉職という知らせが入ってきた。
エドワードは西の戦地に行き、敵の弾丸を受けたのだという。
その知らせの後、ロイはすぐに西の戦地に向かったのだが、
エドワードの遺体はもう処分された後だった。
そしてロイは全てを失ったのだ。
その死んだはずのエドワードが今、目の前にいる。
ロイは殺さなくてはならないターゲットだということも忘れて、
正体を確かめることにした。