Who?
それからの日々は一見穏やかだった。
不自由な体で車椅子生活のレイルをロイが支える。
レイルが一人で出来ることは自分でやらせ、出来ない部分はロイがフォローする。
ロイはどこからみても優秀な執事だった。
そうして過ごしてくうちに分かったことがある。
レイルはカイン将軍に引き取られたとき、記憶喪失だった。
『レイル・カイン』という名前はカイン将軍が名付け親なのだ。
そしてあの西の戦いの場にカイン将軍も参加していたということ。
「ロイ、またボーッとしてる。」
「申し訳ありません。」
「ねぇロイ、」
「何でしょう?」
「掃除出来る?」
「はい、何処の掃除を?」
「じゃあ、料理出来る?」
「多少…ですね。」
「ふーん。」
「何か?」
「何でもない。おやすみロイ。」
「おやすみなさいませ。」
毎晩こうしてレイルが寝るまでロイは傍に寄り添っていた。
エドワードと同じ瞳で見つめてくれる。
エドワードと同じ声で『ロイ』と呼んでくれる。
ロイはレイルのことを何処か確信を持ってエドワードだと思っていた。
重なった偶然がその確信に拍車をかけていた。
空っぽだった心がレイルと居ると埋められていくようだった。
「おやすみエドワード。」
レイルが寝た後、起きないようにおでこにキスをしロイは自室に戻った。
だが、扉が閉まった後、
レイルは静かに起き上がる。