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【ヘタリア】 【悪友トリオ】 「すずらんの花を君に」

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「・・・・お前は、今まで、地上に出てきたことあるのか?」

『いいえ・・・・。私は天に行っても、しばらくは自分のいる状況がよくわからなくて・・・。やっと今の自分を思い出したんです・・・・それで・・・もし・・・できるのなら・・・お兄様にお会いしたいと思って・・!』

地上にいる時間。いることを許されている時間・・・・。
そんな時間があるのか・・・。
それなら・・消えたとしても、また会うことはできるのか・・・・!

それは3人が3人とも、同時に思ったことだった。

ギルベルトがフランシスの腕を離し、マリーに近寄って十字架を渡した。

「ブルゴーニュ。これ、お前に。預かってたのと違って悪いけどって、伝言だ。」
『この十字架は・・・・・・。「テンプルのお姉さま」は・・・お元気?』
「さあ・・・わからねえ。でも、お前が今日ここに来るって手紙で知らせてきたぜ・・・。
今もお前のことを思ってるって・・・・・。これはひげには内緒だぜ。」
『・・・・・はい・・・・・。』
「お前は騎士団・・・・・の仲間だってことだ。忘れんなよ。」
『はい・・・・。もしお姉さまにお会いしたら・・・・よろしくお伝えくださいませ。』
「わかった。会えたらな。」

アントーニョに支えられてフランシスがマリーに近寄る。

「マリー・・・・・。君に・・・・触れてもいい?」

マリーは嬉しそうにほほ笑むと、フランシスの腕をとる。


『お兄様・・・・ごめんなさい・・・・。何も言わずに消えてしまって・・。』

「いや、マリー。謝るのは俺のほうだって。君は俺のせいで消えた・・・それは間違いないんだ・・・・!でも・・・俺を・・・許してくれるかい?自分勝手で都合のいい話だけど・・」

『お兄様・・・・お兄様が今も苦しんでいらして・・・・。私が消えた時、泣いてくださって、今も後悔してるってローマさんからお聞きしたんです・・・・。でも、私は、天でも眠っているような状態で・・・・来れなくて、ごめんなさい・・・!ずっとお兄様を苦しめてしまって・・・。』
 
マリーはそっとフランシスの手を握った。
フランシスもマリーの手を握り返す。

ふわりとすずらんの香りが立ち上った。

『・・・もう・・行かなくては・・・・。』

マリーが、天を見上げて言った。

「もう?まだ・・・まだ話したい・・・・マリー・・・・。」

『・・・・・私・・・私はあまり地上にいられないんです・・・・。』

哀しそうに笑うと、少女は辺りを見回した。
一面のすずらんの花。
遠くには葡萄の丘。

中世と何も変わらない、自分の「国」。


『・・・・お兄様・・・今日はここにきてくださってありがとう・・・。私はローマさんのように、力のある方じゃないから、どこにでも行けるわけではないのです。お兄様がディジョンに、ここに来てくださらなかったら、お会いできなかった・・・・!』

「・・・・ずっと俺を呼んでくれてたよね?マリー・・・。」

『・・・どうしてもお兄様にお会いしたくて・・・。この花畑の・・私がずっといたここでしか、私は地上では具現化は出来ないから・・・・・すずらんの花の力も借りて、やっと降りてくることが出来て・・・・・・ああ・・・行かなくては・・・!』

マリーはフランシスの手を離し、ドレスのすそを手で持ち、優雅に挨拶をした。
中世の、華やかなブルゴーニュの宮廷の貴婦人そのものに。

気のせいか、天のほうからさしてくる光が増したような気がする。
マリーの顔に光があたり、ぼやけ始めた。

「マリー!!また、会えるかい!?またこの季節に!!すずらんが咲くこの季節になら!!」
『・・・・・わからないけど・・・・私の記憶が薄れないで、またお兄様を思い出せて・・・神様が地上に降りる時間をくださったら・・・・!!』

「俺は会いに来るよ!!必ずだ!必ず君に会いに来る!!このミュゲ(すずらん)の咲くこの時に!!5月1日に!!」
『ええ・・・。お兄様・・・・。また・・・・きっと・・・。お会いしましょう・・・。』
「マリー!!待って!!」

フランシスは、今や眩しくなって、目を開けていられないくらいの光の中のマリーをつかまえて、その頬にキスをし、抱きしめた。

「待ってるから!!必ずまたここにきて!!俺も来るから!!」
『・・・・ええ・・・。ありがとう・・・お兄様・・・・』


フランシスの手から、つかんでいたマリーの体の感触が消えた。
すずらんの香りがさらに強くなった。


『さよなら・・・お兄様・・・・。』

マリーの声がして、それから気配が消えた。


フランシスはあたりを見回し・・・それからゆっくりと天を仰いだ。




空は、まずしすぎるほどの光・・・・・。





「さよなら・・・・・俺のマリー・・・・!麗しきブルゴーニュ!!」


フランシスはずっと空を見上げていた。



彼の足もとには一面のすずらんの花。
彼の頬に光る何かが流れ落ちる。

 









その姿を見つめながら、アントーニョがギルベルトに言った。


「なあ・・・・ギルちゃん・・・。」
「ん・・・?」
「お前は消えんなよ。」
「なんだよ・・・急に・・。」
「消えたらあかん。消えたら・・・いつかは会えるかもしれへんが、こおして一緒に旅するとか、会いたい時に会うとか、一緒に酒飲むとか出来へんやん。そんなのさびしいわ。」
「そうだな・・・・おめえらと飲めねえのは、つまんねえ・・・・か・・・な。」


ギルベルトとアントーニョも、フランシスが見上げている空に目を向ける。






消えても、こうしていつかは会える・・・・・。
それはわかった・・・・・・。
ただ、それが百年後なのか・・何世紀も時をまたがないといけないのか・・・・。

それはわからない・・・・。

でも、消えた「国」を思い続けて、フランシスは時を越えて、今を生きてきた。
マリーもまた、彼への思いでここに来た。

それでも・・・・・。



今、ここに悪友たちと一緒にいられることを感謝したい・・・。

「国」として生きて、戦って、失って・・・・。
奪い合い、憎みあい・・・・・そして・・・。
また、「友」としての時を、今は得て・・・・・。




5月の風は優しく通り過ぎていく。
すずらんの花の香りは、立ち尽くす彼らをずっと取り巻いていた。





























「おまけ」


「あー!なんだそれ!俺様も食いてえ!!」
「んなら、これも追加してーな。お!これもいける!ギルちゃん、食べてみ!」
「うおお!ほんとにいけるぜ!!ええっと、今、お前が食べたのは・・ブフ・ブルギニョン(牛肉の赤ワイン煮込みブルゴーニュ風)だってよ!これも追加!!」
「・・・・・。」

メニューを見ては大騒ぎの悪友二人をよそに、フランシスは感傷にひたっていた。

「なんだよ!フランシス!お前は食わねーのか?」
「なんでも食べて・・・・。これはお礼よ・・・。」
「そうか!!ならこれ、食おーぜ!これ!!コック・オー・ヴァン(鶏肉の赤ワイン煮)!!」
「・・・それはディジョン特産のマスタードつけるともっとうまいよ・・・。」