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【ヘタリア】 【悪友トリオ】 「すずらんの花を君に」

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ギルベルトのつぶやきは悪友二人を仰天させた。

「数世紀前って・・・・。」
「・・・・・・・・・・・。」



「・・・・・このへんは、ブルゴーニュ公国の金羊毛騎士団の連中が騎馬訓練する場所だったんだよ・・・。」
「・・・ギルちゃんがドイツ騎士団だった時か?」
「ああ。金羊毛騎士団設立の際の十字架に使われた琥珀は、全部俺んちから運んだんだぜ。まあ、タンネンベルクの後だったから・・・・。騎士団として呼ばれたわけじゃないんだけどな・・。」
「財力も豪華さも、目を見張るくらいの宮廷やったと聞いてたんやけど、ギルちゃん、それを見たんか?」
「ああ。見たぜ。あの当時としては、すげえんじゃないかな。ひげんところが荒れてた分、ヨーロッパの富と文化は全部あそこにあったって気がしたぜ。」
「わざわざ琥珀運びにここまで来たの?」
「まあな。ブルゴーニュの上司は、えっらく騎士団に固執しててよ。まあ、俺しか騎士団について直接聞けるところはなかったからな。その上司が、俺がローマの法王庁に行く途中だって聞いて、大喜びで迎えをよこしてな。騎士団の話を聞かせてくれって・・・。」
「なんか、えろう勇猛果敢な人やったんやろ?」
「確かに、すげえ筋肉してやがったな。戦うために生まれた奴って感じだった。」
「んで、騎士団がいかなるものを教えたん?」
「ん・・・・。俺はあの時、タンネンベルクで負けて、やばかったから、ああいう奴こそほしかったんだけどな・・・。テンプルももうなかったし、ヨハネはロードス島から離れられなかったから・・俺しかいねえだろ。まあ、あの上司が作ったのは世俗騎士団だけどな。」
「じゃあ・・・・・マリー・・・マリー=ブルゴーニュにも会ったことがあるんだ・・・・。」
「ああ。何度かな・・・・。「女の身で騎士団なんか無理です!しきたりなどもよくわかりません!」って、上司に泣き入れてたぜ。」
「・・・・大人しい子だったから・・・。優しい姫君・・って感じの・・。」
「そんな子なんやったら「騎士」なんて大変やん。まさかギルちゃん・・・・・剣を教えたりしたんか?」
「あー?無理だろ。あんな細い腕じゃあ。「騎士団」と言っても、俺たち修道騎士団と違うから騎士団の「具現」でもねえし、なんつってたかな?そうそう、「象徴」みたいなものだから、儀式だけ教えてくれって・・・・。叙勲の仕方とか、作法とかをちょろっと教えたな・・・・。あん時は、上司のほうが俺にべったりつっくいてなあ。話を聞かせろって・・・十字軍の時のとか・・・・。居心地のいい、華やかな宮廷だったな・・・。」
「そう・・・・そうなの・・・・。」


金羊毛騎士団の成立の年・・・・。
それはブルゴーニュ公が「あの子」をイギリスへと引き渡した年・・・・・・。

「あの子」が亡くなった時・・・・ブルゴーニュは絶頂を極めていた・・・・・。

だから、ここにはずっと来なかった・・・・・。
来ることを拒んだ。
そうして、「君」の上司が亡くなった時・・・俺は容赦なく、君の領地を分断してうばった・・・・・・・。
君が消えたことも気づかずに・・・・・。


「おい、フラン?」
「・・・・・・あ・・・・。」
「何、泣いてんだよ!このくそひげが!」
「・・・ごめん・・・・・・ちょっと・・・・・。」


ギルベルトが突然ハンドブレーキを下げ、すぐに上げた。

当然、車はスピンターンをして・・・・。

中に乗ってる二人はしこたま体をぶつけた。

「なんや!ギルちゃん!危ないねん!」
「痛いの・・・痛いです・・・・!とっても痛い・・・!」

「通り過ぎちまったんだよ。あそこだろ?お前が言ってるすずらん畑って。」

ギルベルトが車を止めて、葡萄畑の反対側の小さな傾斜となっている丘を指差した。


そこは真っ白なすずらんの花が連なっていた。
馥郁たる花の香りがここまで漂っている。


「そう・・・・ここ・・・・・。」


今はのどかな葡萄畑と小さな丘の上の林。
そして、傾斜の丘の一面のすずらん。

「・・・・ブルゴーニュの宮廷はディジョンからブリュッセルに移ったんだけどね・・。
でも、マリーはこっちの方が好きだった・・・・。」

アントーニョとギルベルトは車椅子を出してフランシスをそこへ乗せた。

「とりあえず、丘の上まで行くぜ。」

ギルベルトがすずらんの花を踏みつけるようにして進みだす。

「ちょ、ちょっと待って!!花が・・・!」

「ち!面倒な。おい、トーニョ。そっち持ってくれ。俺がこっち持つ。」

車椅子からフランシスを無理やり立たせると、ギルベルトは畑の中を進む。

「花、踏まねえようにするなら、歩け。こっちなんだよ・・・・。」
「こっち・・・?こっちって何を・・・。」

ギルベルトは、胸のポケットに入れていた十字架を取り出した。
中世風の飾りがついている。


「なんね?それ。えらくでかい十字架やな。」
「持って来いって・・指示があったんだよ。」
「指示?」
「まあ、今はいいからよ。先へ進むぜ。」

不思議に思いながらも、3人は花畑の中央まで進んだ。


その時、辺りに光の乱反射のようなことが起きた。

「来たな・・・・・。」
「え?来たって何が?」


「マリー・・・・・・・・・・!」


3人の前には、白いドレスの少女が立っていた。

「いつの間に・・・・。」

「・・マリー・・・マリー・・・・・!!俺だ・・・・・フランスだ・・!フランシスだ!!」

『お兄様・・・・・。』

煙るようなプラチナブロンドの髪が、眩しくきらめいた。

『お兄様・・・・来てくださった・・・。』


その少女はほほ笑んだ。

フランシスは遠い昔を思い出した。

細いたおやかな少女の腕。
静かに微笑む、穏やかな表情。
自分を「兄」として、慕ってくれた「公国」。

「マリー・・・・・・・!」

フランシスは思わず足を前に進める。
倒れそうになったフランシスを悪友二人は同時にがっしりと支えた。

ゆっくりとフランシスを抱えて、マリーの立っているところまで進む。

『・・・お兄様・・・・・。お元気でしたか?』
「ああ・・元気だよ・・・・。マリー・・・・君はどう?」

花のようなほほ笑みを浮かべたマリー=ブルゴーニュ。
すずらんの花の香りが強くなった。

『・・・・私・・・私は・・・元気・・・ですわ・・お兄様。そちらの方は?』

マリーはフランシスを支えるアントーニョを不思議そうに見た。

「ああ・・初めてだったね。こちらは「スペイン」=アントーニョ。それから・・・・「ドイツ騎士団」のギルベルトは知ってる・・よね?」

『はい。お久しぶりですわ。』

ギルベルトを見て、彼の持っている十字架を見て、マリーの眼が丸くなり、そして、上品な、それでいて可愛らしいほほ笑みを浮かべた。



アントーニョは、マリー=ブルゴーニュ公国を見て、その「人」を思い出した。
どこか面影が似ている・・・・。
かつて、自分の「子分」の一人だった、大事なあの女性に・・・・。
同じ土地のせいだろうか・・・・。
ブルゴーニュ公国の範疇と今の「彼女」の国土は同じ場所・・・・・。

マリーがアントーニョを見つめている。