野ばらの君
「…おまえは頑張りすぎだと言っただろう…」
小さな頭に頬ずりをして、ロイは噛みしめるように言う。
何も言えず、どうしたらいいかと思案するリザの視線の先で、そして変化が起こる。彼女の短く鋭い息を飲む音で、ロイはそちらを見た。
視線の先、寝台の上。
それまで眠っていた誰かが、身を起こしていた。
「………ごめんなさい」
ややして、囁くような子供の声。
途方に暮れたような。
「…っ!」
エドは、弾かれたように声の出元を振り返る。
「…あ、る…」
大きな目を皿のように見開いて、そして彼女は呟いた。大事な、弟の名前を。