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ハート・ラビリンス

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   *

「鍵〜! 鍵〜! 鍵はどこだ〜!」
 ピンク色に彩られたキッチンの扉を開け、ルフィは中を覗き込んで家捜しする。調理器具を無遠慮にどけて、食べられそうな食材は袋の中を開けてつまみ食いもする。お行儀の悪い行為にもかかわらず、ローは何も言わないでルフィの宝探しを見守っていた。
「鍵もねぇけど、肉もねぇな」
 冷蔵庫の中身をあさりながら、ルフィはガッカリした感じに溜息をつく。中に入っているのは卵や牛乳に生クリームといった、製菓用の食材ばかりなのだ。
 ルフィの嘆きに、ローの解説が入った。
「ここはやってきた客を『お茶会』でもてなすための部屋だからな。肉が食いたきゃ、晩餐会でも開いている部屋に行くんだな」
「……そんな部屋もあんのか!?」
「いろんな部屋があるぞ。ランチルームもあるし、あとはバーなんかも。中には水しか出さないって部屋もあるらしいが……」
「おれ、そこだけは行きたくねぇな」
「管理人の趣味にケチつける気はねぇけど、素っ気無いよな。洒落てもいねぇし。ま、そういうわけだから、ここに肉はねぇんだ」
「ふぅん」
 いったいここは、どういう場所なんだろう。ルフィは一瞬だけ考えようとしたが、すぐに目的である鍵の探索に頭を切り替えた。
 考えたって分からないものは分からない。ルフィが真剣に考えなければいけないことは、ここから出ることなのだ。
 それともう一つだけ気になるものはあったけれど、まずはとにかく鍵を探すことだと、それだけに集中して挑んだ。


「あー、もー、どこだよ〜!」
 クソーっと叫びながら、ルフィは頑張って鍵を探している。棚の中、ソファの上、クッションの中までも確認してみたけれど、鍵は出てこなかった。
「クソー……」
「もうギブアップか? 麦わら屋」
「まだまだ! おれは諦めたりなんかしねーぞ! コノヤロー!」
 たとえ何日かかろうとも、目的を果たすその瞬間までは絶対に諦めない。
 ルフィはいつもそうやって、難敵とも戦い続けてきたのだ。今回のパターンは勝手が違うから戸惑うけれど、『必ずある』と言った鍵を見つけ出せばいいのだから、ある意味、簡単な話だった。
「……邪魔はしないから、気の済むまでやればいいよ」
「そんときは出て行くときだ!」
「フフ……、いいねぇ、麦わら屋。お前にはなんとしてでも鍵を探し出してもらいたいよ」
 スペードのテーブルに頬杖をついて、ローはルフィの奮闘ぶりを優雅に眺めていた。
「他人事みたいに言いやがってー」
「他人事には違いないからなぁ……。けど、心の底から見つかればいいと思っているよ」
「ふぅん、そっか」
 ローの言葉にルフィは元気をもらって、もうひと頑張りだと、気合を入れ直す。
「どこだ、鍵〜!」
 まだ探していない場所へと移動して、ルフィは同じように家捜しを開始する。ローが眠る場所らしいベッドの上、衣装が納まっている洋服タンスの扉も、無遠慮に開けて中を見る。
 感覚的には、それこそ何時間も探し続けているような感じだった。
 挫けそうになる心を奮い立たせ、鍵はどこだとガサゴソあたりをいじくっているときに、ふと、思い当たることがあった。
 ルフィは漠然と、鍵といったらあの形、という具合に《金属製の細長い棒状のもの》をイメージしたのだけれど、ひょっとしたら鍵がこの形をしているとは限らないのではないだろうか?
 ローはただ『鍵を探せ』としか言わなかった。
 それは、鍵の在り処を明かさない理由とも、関係があるような気がした。
「なぁ、ロー」
「なんだ? 麦わら屋」
「鍵って、どんな形してんだ?」
 ルフィがそう聞いたのと同時に、ローの目が軽く見開かれていた。それから、とても感心したように何度も頷いている。
「お前って、アホなんだか鋭いんだか、よく分かんねぇ男だな」
「どうなんだよ?」
「んー……、お前が思ったとおりで、たぶん正解だと思うよ」
 それは正解を答えているようで答えていない、曖昧な言い方だった。ルフィは眉間に皺を寄せて唸り声をあげる。
「……お前は難しい奴だな。頭が痛くなるぞ」
「ハハッ、だから、直感でいいんじゃねぇ?」
「直感か……、よーし、なら決めた!」
 腰に手を当て、ルフィは力強く宣言するように告げた。
「おれは、お前を一緒に連れていくぞ!」
 どん、と。聞こえるはずのない効果音が響く。
「……はぁ?」
「ここはお前が管理しているんだろう? ならさ、お前を一緒に連れてけば、外にも出られるんじゃねぇかな?」
 ルフィは自信満々に自分の考えを述べた。鍵だけではなく、この部屋を管理しているローごとお持ち帰りをすれば、何も問題がないのではないかと、そう思ったのだ。
作品名:ハート・ラビリンス 作家名:ハルコ