不可視猛毒のバタフライ
私は柵を乗り越えて宙へと飛び込む。そのまま頭から遥か下の地面へと落ちていく。
ごめんなさい岡部。次の私はきっとあなたを救うから……!
一瞬のさかさまの世界。私の脳に急激に近づくアスファルトの路面に、ひらひらと飛ぶ小さな蝶が見えた気がした。
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8月16日。
2人でずっと最後のキスをした。
岡部は私のことを何度も何度も呼んで、私も呼び返そうとしたけれどどうしても声が出せなかったから、名前のかわりにキスを返した。
私のためにここまで苦しんでくれたこの人を早く解放してあげたいと、私は心から願っていた。
作品名:不可視猛毒のバタフライ 作家名:Rowen