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チョコレイト・デイズ

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「きっと、これからもずっとずっとミシェルのこと大好きだわ」
 たった十歳で、そう言いきったルイジの目は片思いの切なさと痛みに苦しみながらも、それさえを上回る愛しさに溢れて輝いていた。
 

「で、ハリーの目がそうだって言うのか?」
 ロンはハーマイオニーを疑わしそうに見た。
「わかんない」
「は? さっきの話は何だったんだよ」
「さあ?」
 ロンは無言で、今度こそ本当にハーマイオニーに背を向けた。おかしくなってるのはハリーだけじゃないんじゃないのか? 付き合ってられない。完全にからかわれている。
「あぁもう、ちょっと待って! そういうこともあるって話よ」
「なぁ、ハーマイオニー」 
 つかまれたローブの端をゆっくり離させながら、ロンは言い聞かせるように言った。いつもと立場が逆転している。
「なに?」
「ここで、こんな話をしてても本人がいないんじゃ意味がない」
「そうね」
「そういうわけで、俺はすっきり、すっぱりハリーに聞く!」
「え?! ちょっとそんなの・・・・・・」
 ハーマイオニーの焦った声を背中に受けながら、ロンはずんずんとハリーに近づいて行った。肘をついてボーっとしているハリーの姿は普段の溌剌とした雰囲気はない。いつからだ? いつからこうなった?
 思わず見上げた天井は青空だ。
 くそっ、こんないい天気の日になんだってこんな妙なことを聞かなきゃなんないんだ。おせっかいは嫌いだ。パーシーみたいじゃないか。あんな石頭になるなんて考えるだけで気が滅入る。とは思うものの、いつまでもこんなハリーを見ているのは気分が良くない。どうにかしてやりたいとロンは思っていた。
「ハリー」
「なに? ロン」
 ふにゃり、と表現したほうが良いような気の抜けた穏やかさで返されて、気合を入れていたロンはウッとつまった。
「どうかしたの?」
「どうかしたのはお前だ。見ろ、ハーマイオニーが『ハリーが来ない』っておかんむりだぜ」
 ロンは扉のそばに立つハーマイオニーを振り返って言った。ハーマイオニーが軽く手を上げた。
「あ、ホントだ」
 ハリーが慌てて立ち上がるのに、ロンは小さくため息をついた。
「ローブの裾が椅子の下敷きになってるぞ」
「あぁ、やんなるなぁ。それより、ロン、行くなら行くって言ってよ」
 ガタガタと椅子を引き下げながら、ハリーは文句を言った。ローブにはくっきりと椅子の汚れた跡がついている。ハリーはそれをどうでも良いとばかりに適当にはらった。
「俺はともかく、ハーマイオニーは百万回くらい言ってたぜ」
「うそっ。怒ってる? ハーマイオニー」
「ありゃ、鬼ババだな」
 これくらいの脅しは多めにみてもらわなきゃなと思っていたロンにハリーは言った。
「またぁ、好きなんだろ?」 
「ばっ、ばかっ!」
 ザザザッと音が出る勢いで顔を赤くしたロンは「そんなわけあるか!」となぜか囁き声で怒鳴った。話し始めた二人を見て歩きだそうとしていたハーマイオニーをロンは手の平を見せて止める。そしてハリーに向き直ると、ハリーの肩に両手を置いて大真面目な顔をして早口で言った。
「そんなわけないから。マジで」
「はいはい」
「信じろよ」
「信じてるよ」
「いーや、信じてない。そのにやにや笑いをやめろって」
「失礼だなぁ。微笑みって言ってよ」
 ハリーはゆっくり歩き出した。これじゃいつまでたっても前に進めない。
「いいじゃん、別に。ハーマイオニーだってまんざらじゃないみたいだし」
「え? マジで? そう思う?」
 一転、恋する男の子になったロンにハリーは笑った。
「やっぱり好きなんだ」
「ハーリー!」
「ご・め・ん。ほら、行こう。愛しのハーマイオニーが睨んでる」
「お前なぁ! な、ハリー」
 ロンは突然小声で名前を呼んだかと思うと、ガバリとハリーの肩を抱いた。
「ハリーは? 好きなヤツいる?」
「僕?」
 ハリーの顔を覗き込むようにして、ロンが探るように視線を合わせてくる。
「どうなんだよ」
 再び問うロンにハリーは肩をすくめた。頭に浮かぶ姿が一つ。
「いるような、いないような」
「いるのか?」
「いないような」
「いないのか?」
「いるような」
「どっちだよ」
 ロンがぎゅぎゅぎゅっと首を絞めるまねをするとハリーは笑った。
「どっちでもいいだろ?」
「良くない。だってさ、そんなのずるいぞ」
「なにが」
「ハーマイオニーのこと」
「あ、やっぱり好きなんだ。信じるなって言うから信じてなかったのに」
 わざとらしく言うハリーにロンは「ずるい」を連発した。ハリーは苦笑を禁じえない。
「ずるいって子供じゃないんだから」
「子供だよ。知りたいの!」
 開き直ったロンはハリーの顔を覗き込んだ。ちょっと驚いた顔をしていた。
「どうした?」

『知ってますか? 子供は知りたがりなんですよ』

「なんでもない」
 一瞬黙ったハリーをいぶかしく思いながらも、ロンはいまやただ純粋にハリーに好きな人がいるのかどうかを知りたくなっていた。
 もしかしたら、もしかするぞ。ハーマイオニーの推測もあたっているのかもしれない。女のカンってのは嘘っぽいけどな。
「いるんだな? イエスかノーかだけでいいから。ほら、ハーマイオニーが来る前に」
 しびれを切らしたハーマイオニーが二人に近づいて来ていた。それを目の端に入れながら、ハリーは呆れたようにロンを見た。それから観念したように静かに揺らめく瞳を閉じるとかすかなため息とともに答えた。
「イエス」
 そうだ、僕は恋をしているのだ。無謀にも先生相手に。
 この胸の痛みが切なさなのだと、もう気がついていた。



 その夜、ハリーが宿題を途中で切り上げ器磨きに出かけたのを見計らって、ロンはハーマイオニーに話しかけた。
「ハーマイオニー」
「なぁに?」
 珍しく真面目なロンの声にもハーマイオニーは宿題から顔をあげなかった。いつもなら感じ悪いなぁとロンが思うその態度にも今日は特別何も感じなかった。
「俺さ、ハリーのあんな目、初めて見た」
 ピタッと手を止めるとハーマイオニーは体ごとロンに向き直った。それから慌ててノートの上にインクの吸取紙を置いて、参考書ごと横へどけた。
「やっぱり? やっぱりいるのね? 聞いた?」
 目をキラキラさせるハーマイオニーにロンの心は複雑に揺れる。聞かずにはいられなかった。
「その前に。ハーマイオニー、ハリーのこと好きなの?」
 少しばかりすねたようなロンをハーマイオニーはきょとんと見つめた。
 このブラウンの瞳が好きなのだ。勝手に心がそう思ってしまうのだから、どうしようもない。ロンはぼんやりとそんなことを思った。俺ってばすっごくハーマイオニーのことが好きなのかもしれない。
「好きよ。だって大切な友達だもの」
「付き合うとか、こ、恋人にしたいとかじゃないの?」
「ロン、私たち今まで十分うまくやってきたと思わない? 私は友達として失うのが怖いくらいハリーが好きよ。あなたもそうでしょ?」
「ふーん。ふーん。そっか。ふーん」
作品名:チョコレイト・デイズ 作家名:かける