GOD BLESS YOU
「俺には理解不可能な類の趣味ですからね」
今更ですが、大丈夫なんですかね、ファルマン一緒で。
「野放しにするわけにはいかんだろう。中尉の言い付けにはちゃんと従ってるようだし。それにファルマンならそれなりの距離は測るだろう」
他には?
「んー、いつまで待機してたらいいのかと、事態の進展気にしてましたんで、とりあえずとっておきのを叩き付けてきましたよ」
「ん?」
とっておき? とっておきの事態なぞあったか?
口に出して聞くより前に微妙に嫌な予感がして、自然と眉が寄る。しかし肝心の当人は気にしたふうもなく、無意味に反り返って高らかに宣言した。
「俺に彼女が出来た事を報告しておきました!」
報告じゃなくて自慢だろうそれは。
というか何度ふれ回る気だ。
面倒だったのであえてツッこまずに放置しておいて、視線をファイルに戻す。
しかしリアクションがなかったのがご不満だったか、ちゃんと聞いてますか?と寄ってきた。はいはい、わかったから。
「だってこないだフラれた時、真剣に労災申請しようかと思いましたからね」
「そんなもの通すか、バカ者。いらん所に恥をさらすな」
「あーでもそのおかげで彼女と会えたんですけどねー」
聞いちゃいねぇ。
先日の雨の日からこっち、この男は常にゴキゲンだ。それはそれで使い易くていい。(酷)いいが、一過性のものかと思いきや、その出会いからお付き合いに進展してしまった辺り、腑に落ちない。
目撃情報ではそこら辺にはまずいないような黒髪の美女だというが…。
「・・・コレの何処が良かったのか・・・」
「え?何ですか?」
いえ、何でも。
・・・しかし、
「ソラリス。――――太陽…か」
「なんです、それ」
「古い西の言葉で太陽を意味する。偶然かわざとかは知らんが珍しい名だな」
「ああ…道理で聞き慣れない響きだと…そかー、太陽かぁ」
しまった、地雷踏んだか。
またトーンが変わった。
ぱあぁ~と再度広がった幸せオーラに一歩退くが既に遅い。ここには他に押しつける相手もいないし、まず逃げ場がない。
「いやー太陽、って雰囲気じゃないんですけど、ああでも笑ってくれるときはそんな感じかなぁ…いや、ミステリアスなトコがまた似合いますよねー」
今度逢った時教えてあげよう、君は僕の太陽だーなんつってハッハー(略)
絶 好 調 だ 。
「・・・あれ、どうしたんですか大佐」
いえ、別に。
これまで良く短期間で(←余計)浮きつ沈みつしてるサマをくり返し見てきたが、いつもに増してコレは凄い。結構削られている身にかなりな破壊力だった。
ついでにこちらは訝しんでます、な気配すら今は察する事も出来ない模様で。
このモードからは信じられないが、ハボックは意外ときっちりと仕事とプライベートを分ける為、下手な事は言ってないだろうが。
時期が時期だけに用心するに越した事はない。取りあえず後で中尉に裏を取っておくように言っておく事にして、机に伏せたまま、彼はおざなりに手を振った。
作品名:GOD BLESS YOU 作家名:みとなんこ@紺