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基本的にこんな感じの毎日です

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 実際は専属ではない筈だが、最早周囲にはそう認識されている矢島。本人も否定する気は無いらしい。寧ろ自分から言ってるし。
「…俺は付き添いだ、付き添い。同じ投手の調子を見るのも必要だろーが」
 どっちが気になるのかどっちもなのか。なんだかんだとやって来た、炎のストッパー、和久井。
「次おいらねーっ!!」
 太一が絡むと十中八九飛んでくる。石田も当然の如くそこにいた。
「………平田さん」
「………この面子になったのは、俺のせいじゃないぞ?」
 クッションというか、何かの時の盾というか。平田としては八木沼やトムも巻き添えにしたかったのだが、危険を察知したのか逃げたらしく、捕まらなかったのだ。
 大山や二階堂は無駄に煽りそうだから除外した。
 下北沢は無駄な程に真剣に、会話に加わりもせずに太一を見詰めている。…いや、正しくはマッサージのやり方を、だが。
 そして、泰二と話しながらの平田のそれが終わったとみるや、
「平田さん、いいですか?」
「うん?」
「んー?」
 太一を抱き上げ、ぽふん、と自分の膝の上に移動させた。
 一同が突然の事に黙ってその様子に注目する中、
「じゃあ実践、いきますっ!!」
 吠えた。
「…えと、下北沢ー…。もしかして、ぜんぶ?」
「はいっ、全員分を!!」
 つまりは、全員分のマッサージのやり方を真似すると。
 …多少の個人差はあっても、そうそうやり方は変わらないと思うのだが。
「…じかん、かかるぞー?」
「太一さんが寝たら、運びますから」
「………えっと………」
 太一もなんとなく、そーゆー問題じゃないんじゃないかなー、とか思ったりする訳だが、なんと言っていいものか。
 結局、大人しく下北沢のしたい様にさせてしまう訳で。
(………な ん だ こ い つ は)
 一方泰二、鬼切れ中。
 バットがあったら取り敢えず手にしているだろうが、生憎この場には無い。平田の判断で。平田、ナイス判断。
「………てめーは見学だろ」
「…こういう事はすぐにやらないと…」
「終わらんだろうが」
 五人分の上、その都度その真似。
 和久井辺りはやらない気もするが、それでも時間は掛かりまくる。矢島とか丁寧にやりそうだし。
「頑張ります!!」
「そーゆー問題じゃねえ!!」
「た、たいじ?」
 下北沢の返しに、泰二が声を上げた。
 色々と限界らしい。
 泰二が何か言う度に、下北沢がズレた答えをくそ真面目に返すので、泰二の切れっぷりが半端じゃなくなってきている。
「…まぁ、太一も下北沢には甘いからなー。初めて出来た後輩な訳だし」
「…しかし、あのままにしておく訳にもいかないな…」
「…あのままにはならねーだろうがな」
 その様子を見守っていた大人組の面々の横、動く影ひとつ。
「おいらもやるーーーっ!!」
「ぐは!!」
「うごっ!?」
「いっ、いしだーーーっ!!」
「はははーっ」
 案の定。
 順番を待ち切れなかった自由人石田の乱入に、なんだかんだとうやむやになりましたとさ。





 その流れで雑魚寝になった翌朝。
「たいちーっおはよーっ」
「ぶわっ!?…い、いしだーっ、だきつくなってばーっ」
「…朝っぱらから騒がしいな、おめーらは」
 べりっ、と二人を引き剥がして和久井。低血圧なのか、単に不機嫌なだけなのか、眉間に皺が寄っている。
「あ、和久井さん、おはよー」
「おう。…今日は投球練習だからな、太一」
「えっ?」
 和久井に頭を撫でられながら、その言葉にそーだったっけ?と思いつつ。
「う、うんっ、わかっ」
「いや、今日は俺が見よう」
「にゃ!?…あ、や、矢島さん。おはよー」
「ああ、太一、おはよう」
 ぐいっ、と引き寄せられ、返事の邪魔をされて、しかしその相手が矢島だった為に普通に挨拶。
 矢島も何事も無かったかのよーに挨拶返し。
「…睡眠時間少なかったんだから、今日は休んでたらどーだ?」
「あ…。矢島さん…」
 和久井の言葉を受けて、心配そうな顔で自分を見上げてくる太一に安心させる様に笑い掛け。
「…大丈夫だ、心配いらない」
 宥める様に頭を撫でた。途端に、ほわ、と太一が笑う。
 それを見て、あーいいなー、なんていう石田の声や、和久井の舌打ちも無視。
 太一の耳に入らなければ関係無いとばかりに太一の頭を撫で続ける、マイペースな矢島である。
「………平田さん………兄貴は一体どんな事になってんですかっ………!!」
「………見たままだろ………」
 起き抜けに見る目の前の光景に、なんだか凄い形相で、物凄い低い声で問うてくる泰二に、そのまんまな答えを返す平田。疲れた口調は仕方ない。
「まぁ、取り敢えず…。太一、おはよう」
「あっ、平田さんっ、おはよー」
「泰二も起きてるぞー」
「あっ、たいじー、おはよーっ」
「う………。あ、ああ………」
 にこーっと笑顔で挨拶されて、なんとなく気恥ずかしげにそう返す。
 そして最後に。
「………おはようございます、太一さん」
「ん、おはよー、下北沢ー。…どーした?」
「………いえ、結局ろくに仕事が………」
 どよん、と重い空気を纏ってそう言う下北沢に、えーと、と困った様に呟いて。
 正座して下を向く下北沢の頭をぽふっ、と胸に抱いて。
「下北沢、わるくないぞー?またやろーな?」
 言って、抱いた頭をなでなで。いーこいーこっ、とのお言葉付き。
「………っ………太一さんっ!!」
「わあっ!?」
 感極まったのか、太一を抱き締める下北沢。
 太一は困りながらも、下北沢の頭を撫でている。
「………………………………」
 泰二が無言で平田を見た。こめかみに浮いた血管がとても目立っている。
 平田はやだなぁ、と思いながらも説明した。
「…その内復活するから、待ってろ。そうすれば太一から離れるから、一応。…それと、ああいう事多いから慣れてくれ。もう太一もそれなりに慣れてアレだ」
「慣れろとっ!?アレにっ!?」
「………じゃあやってもらうかやってこい。太一に」
 そう言われ、言葉に詰まる泰二。
(できるかぁぁっ!!)
 内心では絶叫していたが。
 そして、こういう場面で動くのはやはり。
「おいらもーーーっ!!」
「わあぁっ!?」
「ぶふぅっ!?」
 ダイブ敢行。自由人石田であったり。
「………そしてこれもいつもの事な」
「………………平田さん達は慣れたんですか」
「…まぁ、それなりにな」
 慣れざるを得ないというのが実際の所だ。いちいち気にしていたら、精神的にもたない。
 そうこうしている内。
「今日はおいらと勝負だーっ!!」
「お、おーーーっ!!負けないもんねー!!」
「おれも参加しますっ!!」
 今日の方針本決まり。
「あ。…あっちで決められちゃったな」
「…強いな、あの二人は」
「…無駄に勢いあるだけだろ…。それが太一にゃ有効すぎるだけだ」
 そんな大人組の呟きを横に、遠い目しながら泰二が思う。
(………もうこれ兄貴さらって逃げるしかないんじゃないか………)
 …なんかもういろんな意味で、どーしようもなくなっている泰二だった。




「俺を撫でろ兄貴!!」
 ぱちくり。
 なんだか切羽詰まった表情で、しかし勢いよく出てきたその言葉に、太一は瞬きひとつ。