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【シンジャジュ】我儘な子供

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 血色の悪い頬に思いの外長い睫毛の影が落ちていた。決して健やかだとは言えないが、眠りに落ちた顔は何処か幼く見える。
 彼の脳が夢を見る時間帯になるまで、しばしの間があった。ここ数日は上手く眠れていないと言っていたから、せめて短い間だけでも心身共に熟睡すれば良い。そう慮ったジャーファルは、静かにベッドから身を引く。
 少年の身体を横抱きに抱え上げて寝台の中央にそっと横たえると、薄い掛け布を胸元まで掛けてやった。すると閉ざされたジュアルの瞳からつうっと一筋の涙が伝い落ちていくのを見止めて、ジャーファルは険しく眉宇を潜める。
「君は、本当は……」
 世界を混沌の闇に陥れようとする残忍な少年から垣間見えた真実の欠片に、驚嘆を思わずにはいられない。彼の背負っている運命は、もしかしたら自分の予想を遙かに凌駕する哀しい物かも知れなかった。今まではジュダルの表層しか見えていなかったけれど、一連の言動から察した通りの仮説が、彼の過去に隠されているのだとしたら……。
 ジャーファルは無意識のうちにきつく拳を握り締める。
「……今はとにかく、ゆっくり休んで下さい」
 意識の無い少年に向かい、ポツリと声を落とす。
 そろそろ窓の外が白みはじめてくる頃だった。王宮に住まう人々もじきに活動を始める時間だ。
 窓辺に向かったジャーファルは、室内に光りが差し込まぬよう開口部にしっかりと布を垂らしてやろうと手を掛ければ、ふと窓の外に見覚えのある人影を見つけて微かに目を瞠った。
(あれは……)
 こんなに朝早くから、何をしているのだろう。怪訝に思ったジャーファルは、闇色を取り戻した室内に佇み、思案に暮れる。
 僅かな逡巡の末に、足音を忍ばせて出入口の扉へと向かった。
 パタン、と静かに閉じた背後の室内に、眠りに落ちた一人の少年を残して。