【シンジャジュ】我儘な子供
「ごめんよ、もうそろそろ行かなくちゃ。アリババくんが起きる前に戻っていないと、心配かけちゃうからね」
「……そう、ですか」
膝の上で迷子になりかけた指先をさり気なく引き寄せて、ジャーファルは相槌を打つ。
本当は今すぐジュダルの所へ連れて行きたかったけれど、アラジンの都合があるならば何よりも優先させなければいけなかった。ジンを失くしたばかりの彼にとって、アリババの存在は何よりも大切なものだと感じていた。
「ジャーファルおにいさん、他に用があったかな。また後でも平気かい?」
「はい。後でまたお願いします」
「うん。じゃあね!」
バイバイと手を振って緑斜塔の方へパタパタと走っていく後姿を見えなくなるまで見送ると、ジャーファルも官服の裾を翻して建物の中へと戻っていった。
作品名:【シンジャジュ】我儘な子供 作家名:鈴木イチ