彗クロ 3
ルークやアゲイトに改めて確かめるのも嫌だった。有益な答えが返ってくるとも思えなかったし、なんとなく、あの塔に関しては、深く突っ込んで考えるのが億劫だったのだ。
「さてと。これからの予定だけども」
しんがりとなって荷台を降りたアゲイトが、背負子の大荷物をどっしりと地面に下ろして言った。
「バチカル方面へ砂漠越えをするって線で、手配しちゃっていいのかな?」
「……手配?」
なんというか、嫌な響きだ。意味が違うとはわかっているが。
「砂漠に馬車は使えないからね。それにこの気候だし、色々と特別な準備が必要なんだよ」
「なんかめんどくせーの」
「なんならその間、君たちはバザーでも見ておく? ただし、他人に準備を任せるとなると、砂防靴はダボダボの砂入り放題、防塵ケープはズルズル引きずって歩くようなのが出てきても、文句は言えないよ?」
……実にいい笑顔でこう言われては、おとなしくついていくほかない。
その後、行きつけだとかいう怪しげな店に連れていかれ――かくして冒頭の珍遭遇へと繋がるわけである。
「はにゃ? よく見たら二人いるじゃん。さては……ドッペルーくん!?」
「ツッこむ前にボケを畳み掛けるなあああああああ!!」
……自分の選択を後悔するのに十分な椿事であった。