零時前のヒール
笑顔でお辞儀をしてからくるりと二人に背を向けて、先程話していたのと同じ流ちょうな英語で電話に出、どこか邪魔にならない場所に歩いていくオリハラをしばし呆然と眺め、バーナビーはそのままマーベリックに声をかけた。
「……マーベリックさん」
「ふむ、仕事の電話かもしれないね。ファイナンシャルプランナーをやっていると聞いたが、彼も随分忙しいらしい。若いのにご苦労なことだ。そうだ、彼も君と同じ年ぐらいらしいぞ、バーナビー」
「はぁ」
「そういえばアカデミーを卒業した後、君の周りにはヒーローたちも含め同年代の人がいなかったな」
ぽつり、と呟くようにマーベリックはいって、そのまま小さな声でバーナビーにだけ聞こえるように言った。
「先程の教授も入れても、このパーティーで彼の知り合いも何人もいるようだし、オリハラ君のコネクションも捨ておくには惜しいものだ。それに、ワイルドタイガーも確か日系人だったね。
君の今後を考えても、彼との繋がりは価値あるものになると思うよ、バーナビー」
あぁ、今すぐ家に帰りたい。