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座敷童子の静雄君 2

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物凄い形相で取っ組み合いの喧嘩に発展した二人を、引き剥がすべきか帝人に加勢すべきか、おろおろと考えあぐねていた静雄の前に、少女の着物の袂からするりと例の手鏡が床に落ちた。
「あ!!」
帝人が慌てて手を伸ばしたが、間に合わない。

ぺき、ぺきり


悪鬼の形相で立ち上がった母親の足元で、漆器塗りの手鏡は嫌な音を立てて割れる。
「……うおっ……」
その瞬間、静雄の胸元のペンダントが眩いばかりに光りを放った。
目を開けていられずに瞑った途端、今度は再びジェットコースターが急降下する時と同じぐらい、嫌な重力に押しつぶされて。

(ああ……、これが鍵だったのかよ)
そう気がついた時はもう後の祭りで。
帝人と、別れを惜しむ暇もなかった。


★☆★☆★


「……お帰り、静雄……」

目をあければ、新羅が覗き込んでいて。
ゆうるりと身を起こせば、彼が寝ていたのはリビングのソファだった。

「……新羅、セルティ……。……俺……何日寝てた?……」
「約半日かな」
「はぁ!?」

セルティが携帯のディスプレイを突きつけて来るが、確かに今は朝の九時ちょい過ぎで、昨夜この家に飛び込んでから12時間ちょっとしか経ってねぇ。
「……その、色々あんがとよ。今はまだ混乱しちまって、何から説明すりゃいいのかわかんねーんだけど……」
迷惑を掛け捲った二人には、結末まで知る権利があり、静雄には説明責任が残ってる。
しかし彼の語嚢は豊かではない。
ソファーの上で胡坐をかいてうな垂れ、頭を掻き毟り、良くない頭をフル稼働して何から話そうかと考え込んでいると、勘の良い闇医者の方が察してくれた。

「いいよいいよ静雄、何も言わなくても。私達はずっと君と帝人ちゃんを見ていたから」
「はぁ?」
「君の体はこのリビングに残っていただろう? 不思議な事にね、手で触れていると君視線で、見て経験して考え、体験していた全部が筒抜けで私達に伝わったんだ」
≪バーチャルゲームみたいで面白かったぞ。黒龍退治は、リアルな映画より迫力があった≫

この時、新羅の顔をようやっとまともに見たが、彼の目の下にはくっきりと酷い隈ができていて、体もふらっふらに傾いでいる。
よくよく見れば、顔の無いセルティも、今にもぱたりと倒れそうなぐらいへばっていた。

「……お前ら、なんでそんなボロボロなんだ?……とっとと寝ろよ……」

瞬間、ピシリと室内の空気が氷点下にまで下がった気がした。
セルティの身に纏う黒い影が、おどろおどろしいトグロを巻きだし、新羅のアルカイックスマイルも、ますます妖怪じみたどす黒いものに変わった。

「静雄、その暴言いい度胸だ。帰れなくなった君を一生懸命過去の世界から助けようと、セルティが頑張るから私も協力してたんじゃないか!! いいかい、現実の経過時間は確かに12時間だったけど、君に触れてる間の、私達の体感時間は12日もあったんだぞ。
これがどういう事だか判るかい?
私達はね、12日間も満足に寝ていないのと同じ疲労を今、体に抱えているんだよ。
只でさえ体力の無い私、華奢な女性なセルティがだ。
へばって当然じゃないか!!」

≪新羅、新羅、静雄は知らなかったんだから。それに私達は結局、静雄を救い出せなかった≫
「それがどうした。それでも私達は静雄に巻き込まれて完全に徹夜したんだぞ。それなのに静雄は、この男は……、君をずっと心配し続け、心を痛めてた、セルティへの労わりが全く足りないのが気に食わない!!」

「悪ぃ」
いつもなら、長口上垂れやがれば、うぜぇと切れて暴れる所だが、今回は全面的に静雄が悪い。
「この借りはいつか返すから」
疲れ切った二人を早々に休ませる為、そのまま逃げるように自宅に戻った。



あの後、ペンダントを水を張ったコップに入れても、新羅の家で見たような水鏡を結ぶ事はなくなった。
でも、ぎゅっと石を掌で握り締めて目を閉じれば、脳裏に帝人の声と微かだが映像がちらちらと見える。


向こうの鏡が壊れた今、どんなに帝人が願っても、静雄はもう二度と呼び寄せられる事はなくて。
本当に一方通行な奇跡だが、静雄だけがそっと帝人の姿を見守り続ける事となった。



作品名:座敷童子の静雄君 2 作家名:みかる