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無未河 大智/TTjr
無未河 大智/TTjr
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とある夢幻の複写能力<オールマイティ>

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第五章 0930事件編



九月三十日
俺は一つの真相に迫ろうとしていた
俺はその真相は、知るべきではなかったと、後悔している
そう、あの日
俺は二人の親族に会っていたのだ
片や『木原』としての及第点にある少女
片や『木原』の中でも専用部隊を率いる戦闘屋
そんな二人との出会いを、俺は果たしていた



「…で、どういうことだってばよ」
叶は大きなため息とともに、言葉を吐き出した
理由は明白だ
「どうして目隠ししたまま車に乗せられているんですかね」
言葉通りの意味だ
「すみません。貴方が彼女に会うのは構わないのですが、どこからその場所が洩れるか分かりませんので…」
「まあ、そういう理由なら…」
あまり納得していないという様子で、叶は強引に納得した
そう
叶は今、ある少女に会うために目隠しされてこの車に乗っているのだ
「少し時間がかかりますので、少し体を休めてはどうでしょうか」
「じゃあ、そうさせてもらうわ」
そういわれて叶は、アイマスクの下の目をつぶった
朝が早かったこともあり、その意識はすぐに暗闇に落ちていった



『…やは AIM拡 力 に変化は い』
どこかの研究施設のようだ
少年の視線の先に見えるのは、射撃訓練用の的だった
『じゃあ、ど にこの能 の 質がある でしょ か』
『そ を調べ いるの よ、加 君。いやはや、実 いい 事を て れたよ君は。こ ような能 者を「木 」にも らして れたのだ ら』
気の狂ったような顔をした老人と、少し叶に似た雰囲気の男性が話をしている
『そう 、あ 実験の結 は取り寄せ れ かね?』
『 の実 とは?』
『ほ 、あっ じゃ いか。「置 去り」の を切 開いて「自 だけの 実」を探 出そ とし 実験。あ の 果だよ』
『あ ですか。す にお持 します』
そう言って男性は一時部屋を出る
そして老人は少年の元へとやってきた
『さあ、 君。少 機械に入 うか。大 夫だ、MRIと う体を検 する 械だから』
老人は少年の手をとり、その部屋を出た
『幻 さん、お持 しま た』
しばらくして、男性がMRIのある部屋に現れた
その手には大量の資料があった
『さ これで、彼の「 分だけ 現実」を調 てみよ 。もし したら何か分 るか しれん』
そして少年は目をつぶる
彼の検査が、開始される



「―さん。叶さん!」
彼が目を醒ました時、既に車は止まっていた
「着きましたよ。よほど疲れていたんでしょうね」
「すみません。ちょっと最近仕事とか忙しくて」
仕事とは風紀委員絡みの事だろう
叶は車から下りた
小一時間ほど走って、その場所に到着したようだ
なにやら研究所のような施設
―ここは…二十三学区なのだろうか…
叶は少しだけ予想を立ててみる
「木原叶さん」
しかし、その声に掻き乱されてしまう
「あ、ああ。すまんが、『天岡』と呼んでくれないか。木原の名で呼ばれるのはどうも…」
「分かりました。では天岡叶さん、こちらに」
別にフルネームでなくてもいいのだが…
叶は、その言葉を口に出すことはなかった
そして車を運転して来た男と、そこの関係者であろう人間に案内されて、叶は中のある部屋に入った
さながら、刑務所にある受刑者と会話するスペースの様だった
数分ほどの時間を置き、ガラスを挟んで反対側のスペースに一人の少女が現れた
少し戸惑ったような様子だったが、叶の姿を見てすぐに叶の目の前の席に座った
「よう、実際に会うのは初めてか。元気か?」
叶は少女に向けて話した
「うん、元気だよ。はじめまして、叶お兄ちゃん」
見た目十二歳くらいの少女は、年相応の可愛らしい笑顔を叶に向けて言った
「そうか、それはよかった」
叶も安堵した様子で椅子の背もたれにもたれ掛かった
そしてそのままの姿勢で、再度少女に訊く
「ここでの暮らしはどうだ、円周」
彼女の名は木原円周
生まれて間もない頃に『木原』から隔離され、いままでこの研究所で暮らしてきた、文字通り木原一族の人間だ
ただし、いままで『木原』から隔離されていた為、『木原』としての特性を持っていない
それは叶も同じらしい
本人いわく、『あんだけ実験の被験者になってて、木原としての科学を植え付ける隙なんてないだろ』とのことだ
「うん、そんなに不便でもないよ。いま、とても楽しいことしてるし」
彼女はこの場所にある密室に閉じ込められている
それが今日初めてこの場に出るということを果たしたのだ
「俺は、お前が理不尽な理由でここにいるってのを分かってるつもりだし助けたいとも思うが、俺はもう『木原』じゃない」
「うん、分かってるよ。でも、大丈夫だよ」
「…?」
叶は怪訝な顔をした
いくら『木原』とはいえ、何年も密室に閉じ込められていただけの少女だ
そんな少女に何が出来るのか
そう叶は考えつつも、警戒は怠らなかった
そうだ
円周は腐っていても、及第点に達していないとしても『木原』なのだ
だが
「まあいい。お前が何を考えていようが、俺には関係ないしな」
叶はあくまでこの事については放置を続けるようだ
『木原』に関わってはろくな事はない
そう、理解していたからだ
「じゃあ、帰るわ」
叶は椅子から立ち上がった
「うん。じゃあね、叶お兄ちゃん」
その言葉を背中で聞きつつ、その場にいた男に少し会釈をしてその部屋を出た
「大それた事やってる割に、中身は幼稚な仕返しか…」
施設を出た叶が放った言葉を、聞き取るものはいなかった
そして来た時に乗った車に目隠しをして乗り、来た道を引き換えしていった
その数日後のことだ
一つの爆発音がした
何事かと施設の人間が、円周のいる部屋をのぞきに行った
するとそこには、一人の人間の死体があった
ただの死体ではない
頭部以外の人間の体が蝋の様に溶けてしまっていたのだ
そしてそこにいるはずの少女もいなかった
つまり
何らかの方法で木原円周はこの部屋から逃げた
関係者達が調べているのだが、その理由は未だ分かっていない
そして、木原円周の行方も分かっていない



叶がアイマスクを外した時、そこは自宅前だった
一軒家ではない
叶の家はマンションの一部屋なのだが、その部屋の前に突っ立っていたのだ
「…そこまでして場所を知られたくないのかよ」
叶はため息をつきつつも自身の家へと入って行った
「おかえり。早かったじゃない」
当たり前のように、そこには人がいた
無論、彼の母親だ
「まあ、ほとんど行って帰ってくるだけだったしね」
叶は真顔で言ってのけた
実は叶は、祐樹にどこに出かけるとも言ってなかったのだ
言ったら言ったで心配させるかもしれないからなのだが
「朝早く出て行ったと思えば、帰ってくるのは十一時過ぎってどういう事よ」
「今日が創立記念日で助かったぜ」
今日は黄鐘大付属高校は黄鐘大学と共に創立記念日ということで休みだった
そうでなくては平日であるこの日にあんな酔狂な場所に赴くことは出来なかった
「そういう母さんは?」
叶は訊いた
今日は平日だ
普通に授業があるはずの常盤台の教師である祐樹は、なぜ家でくつろげているのだろうか
「今日は警備員の集会みたいなものがあるから休みとったのよ」
「いやいや、授業とかどうなってんのよ」
「大丈夫。教務の先生には根回ししといたから」