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こらぼでほすと 拉致1

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 トダカにしてみれば、反対する理由なんてものはない。ちゃんと自分の考えで、先を決めているのだ。それがおかしな方向なら是正するだろうが、ふたりの息子が言うのは、至極もっともなことだ。中途半端にしないために、片方を休んで、もう一方に専念するというのだ。それは理解できる。それに、先のことを考えて、キラや歌姫のことを護るのも、コーディネーターとしては正しい選択だろう。
「ただし、キラ様にも、ちゃんと説明して許可を取りなさい。そちらのほうが大変なんじゃないかな。」
「そちらは、もう許可を貰いました。キラさんは、『トダカさんが、うんって言ったらね。』と、おっしゃいましたので、これで全てクリアーです。」
「え? 」
「ここんとこ、キラさんの手伝いでラボに行ってただろ? その時に、話はしてきた。今回限りの特別許可だって言われたけどな。」
 キラとしては、あまりシンとレイを参加させたくなかったのだが、実際問題として戦力としては重要だ。それに、これさえ終れば、永久とは言わなくても、ある程度の世界平和は訪れる。刹那たちの組織を壊滅させないためには、『吉祥富貴』のMS組は全機必要だったし、シンとレイの言い分も解るので、今回限りということで渋々許可した。アスランとラクスが、渋るキラを宥めてくれたのも助かったところだ。全員、「終ったら、ちゃんと復学して卒業しないと、今後、絶対に参加させない。」 とは言ったのだが。
「レイ、ギルさんのところへ戻るのが、かなり遅れるけどいいのかい? 」
「構いません。・・・・俺としては、キラさんたちを護ることのほうが、今は重要だと考えています。・・・それに、ママが泣くのは見たくないんです。」
 レイの時間には限りがある。それは、シンには知らされていないが、トダカは議長本人から教えられた。だから、レイがやりたいことを優先させてやって欲しい、とは頼まれているのだ。
「とうとう、ギルさんよりママのほうが大切になってしまったか・・・まあ、いいさ。好きにおやり。」
「ありがとうございます、トダカさん。・・・・俺、ママと約束したことがあって・・・それは刹那たちが無事でないと履行してもらえないんですよ。」
 やがて、レイの終わりが来る。その時、最後ぐらいは、あのママに看取って欲しいとレイは願っている。そのためには、ママに無事でいてもらわないとならない。そうなると、刹那たちが無事に生き残ってもらわないとならないから、そういうことになった。シンほど先のことを考えたわけではない。むしろ、自分のために、だ。最後ぐらい家族に世話されて、ゆっくりと眠りたい。時間の少ないレイにとって、それぐらいの我侭は許される。何も言わず、トダカも微笑んで頷く。なんとなく、レイの約束は解ったのだろう。
「とうさんのIDコードを書類に入力してくれたら、申請書もできる。明日にでも、頼んでいい? 」
「ああ、いいよ。とりあえず、最終の試験と論文は、しっかりクリアーしなさい。」
「了解。・・・あーなんかどっと疲れた。」
 シンは、割と簡単に許可が降りたので気が抜けた。これで、来年からは、本格参戦できる。将来の行き先は、まだ決めていないが、その前にクリアーすべき山ができたという感覚だ。
「おまえも、そういうことを考えられるようになったんだね。・・・・私としては、それは嬉しいよ、シン。」
「俺らは成長期真っ只中だぜ? とうさん。」
「まあ、そうなんだけど。シン、レイ、決めたことは貫きなさい。それだけは約束だ。」
「うん。」
「わかりました。」
 組織の再始動については、トダカも、いろいろと手配している。オーヴとの兼ね合いもあるし、トダカーズラブだけでなく、ウヅミーズラブとカガリンラブ、その他の親衛隊たちも、これについては協議している。今の連合が崩壊することを前提に動いているので、『吉祥富貴』の動きとの連動も予定しているところだ。来年は忙しくなるだろうな、と、苦笑する。



 師走の月に突入して、すでに半月が経っている。だというのに、なかなか仕事が思うように進まない。予定通りなら、すでにフェルトを地上に降ろしている時期なのだが、それもできかねている忙しさだ。
「すまない、フェルト。」
「ううん、これが終ったら降りるよ? ティエリア。なんとか年末には降りられると思う。」
 MSシステムのマッチング作業を手伝っているフェルトは、そう言って笑っている。フェルトだけ、今年は長期の休暇を取れなかったので、小刻みに地上へ降りているのだが、この調子だと、年末年始の休暇は長くても十日が限度ということになる。それが、ティエリアは申し訳ないと謝っている。ヴェーダの作業領域は拡大したのだが、ロールアウトしてくるMSたちのシステムは、各自、異なるものなので、MSとシステムのマッチングが捗らない。もう何度も八つ当たりグッズのパンダを蹴り上げたかわからない。焦っても進まないし、ティエリア一人で、どうにかなる作業でもない。スタッフのみんなが、それぞれの作業を精一杯やっているので、これ以上に作業効率も上がらない。
「春はフェルトが降りるといい。その時は、優先的に降りられるように予定は組もう。」
 春は、親猫の誕生日がある。そして、春頃の親猫は元気だし気候もいい。その時期なら、ゆっくりと滞在もできるから、ティエリアは来年の予定を考えている。梅雨時分だけは、自分か刹那でないと、ニールが嫌がるからだ。
「ううん、そんなことしたら、ティエリアは一年も地上に降りないことになっちゃうでしょ? あたしが、今度は梅雨に降りる。」
「・・あ・・いや、フェルト。」
「ニールは嫌がるけど、あたしだって看病ぐらいできるよ。それに、刹那が降りることになるかもしれないんだから。」
 刹那には組織へ戻るように連絡してある。年内に戻ってくれば、梅雨時分の降下は刹那にしてもらえばいい、と、フェルトも考えていた。
「刹那は、まだ戻って来るつもりはないらしい。ぎりぎりになるだろう。」
 エクシアは、太陽炉で稼動している。それが戻らないと、刹那の機体はマッチングテストもできない。ロールアウトは、ティエリアの機体に次いで二番目だが、おそらく、来年の終わりぐらいまで戻っては来ないだろう。ニールから聞いたところによると、マイスター組リーダーとしての資質と経験を育てるために地上を放浪している。それを終らせるのはギリギリになるとのことだった。
「じゃあ、あたしが梅雨に降りて、ティエリアは秋ね。」
 基本的に、半年に一度、地上でリフレッシュ休暇を取ることになっているので、フェルトがそう言う。その次は、もう無理だろう。アローズの動向如何だが、今の勢いだと来年には本格的に動き出す。今も、かなり過激なテロ対策と称して、小国や連合に従わない国に制裁を加えている。それを見過ごしているのも限界だ。
「・・・フェルト・・・それだと、きみが損をするぞ。」
「損でもないよ。大丈夫。ちゃんとスケジュールの調整はやる。」
作品名:こらぼでほすと 拉致1 作家名:篠義