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B.R.C 第一章(1) 闇に消えた小さき隊首の背

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#06.理不尽な要求【B】



 死神たちが慌てふためく喧騒を背に聞きつつ、阿散井たちが連れて来られたのは、彼らの予想を裏切って一番隊だった。
 地下議事堂に連れて行かれるかと思っていた三人は、行き先が一番隊舎であったことに、自分達が思っているよりも事は重大ではないのかもしれない、と微かな希望を抱く。しかし、中央四十六室を名乗る男たちは、その希望を踏みにじった。

「ここは……」

 目の前に聳える巨大な扉。長く暗い廊下を、松明の炎がぼんやりと照らす、一番隊の奥まったところにあるこの部屋が、隊首会に使用される部屋であることを、阿散井たちは知っていた。
 男たちは、通常隊長しか入ることが許されていないその部屋の扉を、何の断りもなく開け放った。
 途端、視線が集まるのを感じた。

「隊、長……」

 雛森が呼んだのは誰だったろうか。
 そこには、護廷十三隊隊長のうち、日番谷を除いた全員が揃っていた。そして、彼らだけではない。

「雛森!」
「阿散井、吉良!」

 阿散井ら三人を囲む男たちと同じ装束を身に纏った者たちに腕を後ろに抑えつけられ、床に膝をつかされた副隊長たちが、通例通り向かい合って立つ隊長らの傍ら、元柳斎と向き合う形に横一列に並ばされている。
 声を上げたのは松本と檜佐木だったが、阿散井たち三人以外の副隊長は皆揃っていた。

「どうなってんだ、こりゃ……」

 阿散井が呆然と呟く。
 立ち尽くす三人を、男たちが突き飛ばすようにして部屋の中へと押し入れる。

「何しやがる!!」

 騒ぐ阿散井を相手にする事なく、中央四十六室を名乗る男たちは三人を松本たちと並ばせると同じ様に跪かせた。
 このヤロウ……っ! と目つきを鋭くする阿散井に、

「騒ぐな。もうじき役者が揃う」

 と、彼を抑えつける男が言う。

「どういう事だ?」

 唸るように吉良が問うた。それと間を置かず、扉の外が騒がしくなる。

「ほら、揃ったようだぞ」

 男が笑い混じりに、扉を首だけで振り返る。
 バンっ!と荒々しく扉が開き、

「うおおおぉぉぉぉおおおっ?!」

 黒い塊が転がり込んできた。
 二転、三転し、四肢を投げ出して倒れ伏す男に視線が集まる。
 黒い装束にオレンジの髪。死神とこの男の付き合いは、早くも一年が経とうとしており、それらの特徴はすでに見慣れたと言える。

「君は―――っ!」
「い、一護ぉおっ?!」

 浮竹と阿散井の、驚愕した声が重なる。

「痛ぇぇっ!! クソっ、何なんだテメェっ!!」

 バネのように跳ね起きた男―――死神代行、黒崎一護は、自分が突き破るようにして開いた扉の向こうへ怒鳴り散らす。

「ふん。貴様がくだらん悪あがきなどするからだ」

 一護と違い、悠々と扉を潜ったのは、やはり、阿散井たちを取り囲んだ男達と同じ装束の男。その腕には朽木ルキアを抱えていた。それを目にした阿散井は目を見開き、白哉は鋭い視線を男に向けた。

「―――わしらを集めて、何をするつもりじゃ?」

 ギィ、と扉が閉まったところで、元柳斎の声が部屋の空気を震わせる。

「口の利き方に気をつけよ、山本元柳斎重國。我々は中央四十六室の者であると言ったはずだが?」
「正確には、禁踏区域から出ることのない中央四十六室の代行だが、我々の持つ権限はあの方々と同等である」

 そう言って、一人の男が懐から一枚の布を取り出した。それを広げて見せれば、一護を除いた死神たちは息を呑んだ。
 チっ、と舌打ちをしたのは更木だろうか。

「あ? なんだ? あれがどうかしたのか?」

 一人、状況について行けない一護が、慌ただしく周囲を見渡す。

「……馬鹿者。あれは―――」

 一護の教育係を任されているルキアが、絞り出すように言葉を紡いだ。
 黒い墨で刻まれた紋様。それは中央四十六室の印だ。
 中央四十六室の遣いであることを証明するそれ。故に、男たちの言葉は『絶対』。
 中央四十六室の代行ということは、彼らから命令を受けたということだ。つまり、白装束の男達に逆らうことは、中央四十六室に逆らうことと同義。下手をすれば、自分たちばかりか、自隊の他の隊士たちにまで、何らかの処罰を与えられ兼ねない。
 下手な言動は出来ない。

「では、中央四十六室代行の汝らに問おう。一つ、我ら護廷十三隊隊長が収集されたのは何故か。一つ、各隊の副官が拘束されているのは何故か。一つ、席位も持たぬ十三番隊所属朽木ルキア、及び、死神代行とは言え、人間である黒崎一護がこの場に在るのは何故か」
「そう急くでない」

 問いを並び立てる元柳斎に、男達は不気味に目を細め、

「これは、中央四十六室の命である」

 そう前置きし、彼らは告げた。


「今から、貴様ら隊長十二名と死神代行黒崎一護の計十三名に、命をかけた試合を行ってもらう」


 非道な命令を。

「なん、だと……?」

 砕蜂は驚愕に引き攣る喉奥から、声を絞り出す。

「聞こえなかったか? いたって簡素な試合だ。生きれば勝者となり、死ねば敗者となる」
「はっ! 遠回しに言いやがって。つまりは、殺し合えってんだろ?」
「野蛮な物言いをすれば、そうなるな」

 更木の言葉に、男たちは忍び笑う。それがどうにも薄気味悪くて、更木は「けっ」と吐き捨てた。

「……とても、良い趣味とは言えませんね」

 珍しく、卯ノ花が眉を潜める。

「儂らが殺し合う事に何の意味がある」
「意味など求めてはいないのですよ、狛村隊長」
「そう。中央四十六室が求めるのは、単なる“暇潰し”だ」
「暇潰しだと?」

 牙を剥き出し、怒りを露わにする狛村。霊圧が上がり、ずん、と空気が重くのしかかる。

「ふざけんなっ! 暇潰しで仲間に刀を向けろって言うのかよ! 仲間を殺せって言うのかよ?!」
「―――くだらぬ」

 それに呼応するように黒崎が吠え、白哉が吐き捨てる。

「所詮、貴様らは、上に立つ者にとって道具に過ぎん。その道具で遊んで、何が悪いと申すか」
「これは中央四十六室の要望である。何人も異論を唱えることは出来ん」
「この部屋の四方に置かれた『鏡玉』を通じて、中央四十六室も地下議事堂にてこの様子をご覧になっている。逃げる事は叶わん」
「さあ、刀を取れ」
「さあ、命を奪え」

 男たちの囁くような声が続く。
 囁きながら、男たちは腰に帯びた短刀を引き抜き、それを、自分たちが拘束する副隊長十二人とルキアの首に添えた。

「てめぇら、何のつもりだ!」

 一護がルキアを抑え込む男に駆け寄ろうとするが、

「動くな」

 その一言と、ルキアの首にさらに突き付けられた刀に制される。

「一つ、言い忘れていた」

 松本の首に刀を添えた男が言う。

「試合における決まり事だ。副官は、各隊長が敗者となった時点で、その首を落とせ、とのことだ」
「それは、負けは自分の死だけではなく、副官の死も意味するという事かな?」
「ああ、そういう事だ。せいぜい、自分の副官を殺さないように全力を尽くすがいい」

 藍染に頷き、その言葉を肯定したところで、男は「ああ」と呟き、松本を見下ろした。

「貴様の隊首は、居ないのだったな」

 男の言葉に、松本は目を細め、射殺すように男を睨みつけた。